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1.ラーメン生地の複合について
1.1複合って何?複合の役割とは?
ラーメンの製麺工程では、麺生地と麺生地を合わせる複合工程というものがあります。
仕入れ麺の方は意識することは少ないかもしれませんが、自家製麺を始めようとする方、既に始めている方にとっては、重要な工程です。
では、複合にはどんな役割があるのでしょうか。
複合工程には、下記の役割があります。
- グルテンを鍛る
生地を折りたたみながらグルテン組織を網目状構造に繋ぎ合わせる。 - 均一な鍛え
生地を折りたたみながら全体をまんべんなく鍛える。 - 適度な鍛え
グルテン組織は破壊する手前までしっかりと生地を鍛える。
複合は何度か麺を圧延するため、製麺工程がひと手間かかります。しかし、この複合工程が美味しい麺を作るポイントの一つになります。
1.2 複合のメリット
複合工程によって、2枚の麺生地が重なり、生地が鍛えられます。
複合によるメリットには、
・茹で伸びしにくい麺に仕上がる
・生地が強靭になり破れにくくなる
・ラーメン麺が千切れにくい
などがあります。
生地は適度に鍛えることでメリットを得られますが、鍛えすぎるとグルテン組織が破壊されて、麺質が悪くなるため注意が必要です。
大和製作所の実験によって、複合回数で麺の硬さ・ねばりに違いが出ることが分かりました。(2.1 複合回数が麺の硬さ・ねばりに影響する)
1.3 複合のデメリット
複合工程をしっかりと行うには、作業する手間を取らなくてはいけません。
そのため、作業時間が取られるといったコストがかかります。
しかし、複合工程は、慣れると数分~十数分で手早くできるようになります(※1)ので、実際の店舗では、限られた時間の中で複合工程をしっかりとするための無駄のないオペレーションを作り上げることが大切です。
(※1) 生地の量によって作業時間は異なります。
2.複合工程をしないと麺は美味しくないの?
2.1複合回数が麺の硬さ・粘りに影響する!
複合をしないと本当に美味しい麺はできないのでしょうか?
実は、複合工程が麺の硬さ・粘りに影響することがわかりました!
今回は、その複合の回数によって麺の堅さがどう変わっていくか実験しました。実験内容は、麺を同一条件(粉の種類、加水率)で複合回数が1~4回のラーメン麺を用意。レオメーターという粘弾性を測定する測定機で測定します。
【製麺内容】
・粉:大和魂spirit
・加水率:35%(内かん水1%、塩1%)
・切刃:18番(mm)
上記の内容で、複合回数を1~4回の各4種類の麺を用意しました。
実際の測定結果は下記のとおりです。
基本的には複合回数を増やすと麺が硬くなりますが、複合4回目になると硬さの数値が落ちているのが分かります。これは、複合しすぎることでグルテンが破壊されているということになります。このことから複合には適度な鍛えが重要だということが分かります。
2.2 複合工程の目安は?
複合しすぎると、グルテンが破壊されることで麺の粘り・硬さが無くなるという実験結果が出ました。麺の程良い硬さと粘りのバランスに加え、大和ラーメン学校では複合を2回に推奨しています。また、どうしても複合工程で硬さを調整する場合は回数を3回までにした方が良いでしょう。
2.3 複合しないとどうなる?
複合工程によって麺を適度に鍛えることで、様々なメリットが得られることが分かりました。では、ラーメン麺を複合しない場合はどうなるでしょうか?
複合した麺と比べると…
・茹で伸びしやすい
・麺の強度が足りずに千切れやすい
・麺の粘りが少ない
・麺の硬さが足りない
などなど…。
商品のコンセプトにもよりますが、複合工程(生地を鍛えること)なしでは、あまり美味しいとは言えない麺になりそうですね。
3. 複合工程の注意点 - 複合工程の前後に必ず熟成させる -
複合工程を行なうにあたり重要なことは、生地の熟成時間を十分に保持した後、複合をすることです。ミキシングした後、すぐに複合すると、(グルテン組織のストレスが十分に取れないため)多加水の生地ほど、粘りの無い状態になります。
生地にミキシング時のストレスが溜まっているため、熟成時間で生地を休ませることで、ストレス(内部応力)を取り去ってから、複合をすることが大切です。
3.1 複合工程の前に熟成をしよう
熟成とは、ストレスのかかった生地(グルテン組織)を休ませることで、ストレス(内部応力)を緩和する工程をさします。熟成は、ミキシングが終わって複合工程に入る前に行いましょう。また、複合工程後にも熟成は必要になります。
複合工程の前に行う熟成工程には、下記の役割があります。
- 小麦粉の水和
ミキシングを終えた段階では、生地の中の水は均一ではありません。そぼろ状の麺生地に水が行き渡ってしっとりするまでには、ある程度の時間と温度が必要です。 - 脱気作用
ミキシングの際に生地に取り込まれた小さな気泡を抜きます。これは、生地全体が緩いそぼろ状の時に寝かせなければ抜けません。気泡が残ったまま製麺すると、茹でる時にグルテン組織を破壊したり、茹であがった麺が白く不透明になったりします。 - グルテンの緩和
ミキシングが完了した段階で、既にグルテンの緊張は限界に達しています。これ以上複合や圧延で鍛えると、グルテン組織が破壊されてしまいます。なお、グルテンの緊張は「約5分ごとに半分まで減少する」ということが分かっています。
熟成工程:ミキシング後の生地を加水により異なりますが、多加水の場合は「25℃3時間」もしくは「28℃2時間」寝かせます。これは、少加水の場合は、加水状態によって短縮されます。また、季節による温度変化の影響で、熟成時間・温度の調整が必要です。
詳しくは、弊社のラーメンの製法教科書を参考にして下さい。
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3.2 複合工程の後にも熟成が必要です
美味しい麺を作るためには、ラーメンの複合工程の後にも熟成が必要になります。
特に多加水の場合には、複合した後にも生地の状態で熟成させます。40%以下の加水の場合でも、麺線の状態で熟成が必要です。複合前の熟成とは役割が異なり、「小麦の中の酵素」を「程良く」働かせることが目的です。「程よく」熟成した麺は、透明感が出てコシ(粘り)が増しますが、季節による温度変化など、外部環境の影響を受けるため、この「程よく」が難しいのです。
3.3 熟成しないとどうなるか?
一番分かりやすい影響は、複合以降の工程でグルテン組織が破壊されて麺が切れやすくなります。熟成は、非常に時間がかかる工程ですが、美味しい麺を作るためには欠かせません。
この熟成の製麺法は、大和製作所が業界で初めて提唱した技術です。
仕入れ麺を使っている方が、大和製作所の製法で作った麺を食べた時に、その差に愕然とすることがよくあります。一番大きな要因として、熟成工程の有無が影響しているからです。
大和製作所では、業界初の「熟成庫」を作っており、安心して熟成ができる仕組みを提供しています。
仕入れ麺を使っている方は、あなたの仕入先では、この「熟成」をしているでしょうか?
自家製麺をしていて、まだ熟成をしていないようでしたら、まずは一度お試しください。
4.まとめ
・複合とは、麺生地同士を(圧延をかけながら)合わせて鍛えること
・複合回数は、2回が目安
・複合の前後には、必ず熟成をすること
毎日の自家製麺は大変ですが、お客様に「美味しい!」と言って頂ける美味しい麺を作るチャンスでもあります。
ぜひ、情熱のこだわり麺で美味しいラーメン創りましょう!
美味しい麺は誰でも作れる
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大和製作所の長年の研究の成果である膨大なデータベースと、
開発した1,000以上もの麺レシピを元に、麺作りの専門家がご要望の麺の製法、
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