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1.生産年齢人口の減少だけではなかったのです。
最近、人手不足の原因として最も話題になったのは、「団塊世代の引退」と生産年齢人口の(15歳から64歳までの働き盛りの人口)の減少です。
下図1は、総人口、生産年齢人口、若年者人口(14歳以下)、高齢者人口(65歳以上)を示している有名な関係図です。
これから明確に分かる通り、現在の日本の総人口はピークからほとんど減少していないのです。
ところが生産年齢人口は、1995年のピークから2019年までの24年間で15%も大きく減少しています。この生産年齢人口の大幅な減少が、人手不足の最も大きな原因だと言われてきました。
2.生産年齢人口はピークから大きく減少しているが、就業人口はその間ほとんど変化していない
総人口 | A生産年齢人口 | B就業人口 | 会社数 | 医療 福祉 労働者 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単位 | 千人 | 千人 | 比率 | 減少数 | 千人 | B/A | 万社 | 千人 | 対 2002年 増加数 |
1995 | 125,570 | 87,160 | 100.0% | 0 | 67,210 | 77.1% | |||
1996 | 125,859 | 67,280 | 6,503 | ||||||
1997 | 126,157 | 67,770 | |||||||
1998 | 126,472 | 66,990 | |||||||
1999 | 126,667 | 66,090 | 6,185 | ||||||
2000 | 126,926 | 86,220 | 98.9% | -940 | 65,610 | 76.1% | |||
2001 | 127,316 | 65,370 | 6,119 | ||||||
2002 | 127,486 | 64,610 | 4,300 | 0 | |||||
2003 | 127,694 | 64,640 | |||||||
2004 | 127,787 | 65,010 | 5,710 | ||||||
2005 | 127,768 | 84,090 | 96.5% | -3,070 | 65,480 | 77.9% | |||
2006 | 127,901 | 65,800 | 5,703 | ||||||
2007 | 128,033 | 66,080 | |||||||
2008 | 128,084 | 64,090 | 6,000 | 1,700 | |||||
2009 | 128,032 | 63,140 | 5,854 | 6,230 | 1,930 | ||||
2010 | 128,057 | 81,735 | 93.8% | -5,425 | 62,980 | 77.1% | 6,560 | 2,260 | |
2011 | 127,753 | 81,303 | 93.3% | -5,857 | 62,930 | 77.4% | 6,780 | 2,480 | |
2012 | 127,498 | 80,173 | 92.0% | -6,987 | 62,800 | 78.3% | 5,423 | 7,080 | 2,780 |
2013 | 127,247 | 78,996 | 90.6% | -8,164 | 63,260 | 80.1% | 7,380 | 3,080 | |
2014 | 126,949 | 77,803 | 89.3% | -9,357 | 63,710 | 81.9% | 5,509 | 7,600 | 3,300 |
2015 | 126,597 | 76,818 | 88.1% | -10,342 | 64,010 | 83.3% | 7,880 | 3,580 | |
2016 | 126,193 | 75,979 | 87.2% | -11,181 | 64,650 | 85.1% | 8,110 | 3,810 | |
2017 | 125,739 | 75,245 | 86.3% | -11,915 | 65,300 | 86.8% | 8,140 | 3,840 | |
2018 | 125,236 | 74,584 | 85.6% | -12,576 | 66,640 | 89.3% | 8,310 | 4,010 | |
2019 | 124,689 | 74,011 | 84.9% | -13,149 | 67,973 | 91.8% |
以上より明確なことは、生産年齢人口は24年間で1300万人あまり減少し、就業者人口はこの間ほとんど変化していないということです。雇用総数が増えているのは、女性や65歳以上の高齢者の雇用が増えている(=労働参加率が上昇している)おかげだといえます。また同時に、医療福祉労働者(介護職など)は2002年からの16年間で、400万人も増加しているのです。
併せて、人手不足に拍車がかかっているもう一つの大きな原因は、宅配便の大幅な増加です。
3.人手不足の最も大きな原因は、付加価値の低い介護、医療、運送などに多くの人手が取られているため
人手不足の大きな原因は上記の様に、現在の日本がリーマン前のような輸出主導型ではなく、個人消費や公共投資といった労働集約のような内需主導型であることの影響も少なくないといえます。
従って消費は、個人消費、政府消費とともに底堅く増えて行く可能性が高く、政府消費は、学校や警察などの公共サービスに加え、医療・介護などがここに含まれるため、高齢化に伴って需要が拡大して行く分野です。
2002年以降、医療・福祉分野での雇用者は430万人(現行データがさかのぼれる2002年1月)から748万人(2017年2月)へと318万人も急増しています。需要サイドの要因としては、(必要不可欠ながらも)低付加価値の職種が増えることで、その分野に雇用が吸収されています。
雇用全体では同期間に451万人増えていますが、増加分の70.5%を医療・福祉が占めているのが、人手不足の大きな要因なのです。
4.若年層は過去20年間で3割も減った
人口減少は少子化が原因であり、少子高齢化はかなり前から進んでいましたから、総人口は横ばいでも人口構成は大きく変化しています。
1997年と2017年を比較すると、15歳以上、30歳未満の若年層人口は約32%も減少しました。
一方で65歳以上の高齢者人口は79%も増加しています。
この間、総人口はあまり変わっていませんから、経済全体の総需要もほとんど変化していません。
(高齢者の消費は現役時代と比較すると落ちますが、基本的な衣食住への支出はそれほど変わらないのが普通です)。
需要が変化しないのに、それを満たす製品やサービスの提供に従事できる人員は減っていますから、当然の結果として人手不足が進行するのです。
特に、外食産業や小売店など、若い従業員をたくさん必要とする業界で人手不足が顕在化したのは、若年層人口の減り方が激しかったからなのです。
人手不足分野では、相対的に高付加価値の専門的・技術的職業と、対人的なサービスの職業(含む介護関係の職種)や輸送・機械運転の業務、ならびに運転や建設など現場業務への二極化が進行しています。
2017年7月3日に日本商工会議所が発表した「人手不足等への対応に関する調査」では、「人手が不足している」という回答が最も多かった業種は宿泊・飲食業でした。
次いで、運輸業、介護・看護、建設業などが続きました。
5.飲食ビジネスにおける強烈な人手不足の実態
これからの20年は、日本の多くの中小、零細ビジネスが淘汰されるプロセスの始まりです。
人手不足は企業規模の大きいところよりも、小さいところに集中しているのです。
人手不足こそが、生産性の低い、弱いビジネスを抹殺する張本人なので、決して軽く考えないことが大切です。人材不足は既存の飲食ビジネスにとってマイナスばかりであるだけでなく、ビジネスの存続に影響する一番重要なファクターです。
人手不足の結果、飲食ビジネス、麺ビジネスに起きている現状は次の通りです。
1.いくら募集しても応募がない
正社員、パート、アルバイトともに採用市場の競争は厳しく、うどんそば店、ラーメン店は、働く人にとって魅力のないビジネスです。なので、求人広告を出しても応募がほとんどなく、もしあっても採用レベルにほど遠い人が来るのです。
このような人を採用しても、麺ビジネス特有の労働環境の厳しさについてこれず、すぐに辞めてしまうのです。
もし辞めても、人手不足市場の現状により、他の仕事がすぐに見つかるので、我慢して辞めないという必要がありません。「我慢して、プロになり、道を究める」というプロ意識を持った人はいないに等しいのです。
2.飲食店の仕事は厳しいわりに、賃金が低く、優秀な人を採用できない
求人が増え人手不足の状況になると、一般的には賃金も上昇します。ですが、厚生労働省が発表している物価上昇率を考慮した“実質賃金”は、1996年頃をピークに減少傾向が続いています。
これは世界の先進国の中で唯一、日本の大きな課題です。日本の賃金は過去25年間、ほとんど上がっていないのです。
理由の1つとして考えられるのは、非正規雇用者数の増加です。
(厚生労働省の資料によると、非正規雇用労働者数は平成6年から緩やかに増え続けている)
本来であれば企業側も正社員として雇用し、賃上げをし、非正規雇用者を正規雇用に切り替えるという形がよいのです。しかし現状、正社員の人数は増えていないのです。
これは企業側と働く側の双方の問題で、働く側も正社員として働くよりも非正規雇用を望む人が増えているのです。
人手不足が続いているのに、従来と同じ採用条件で求人し、賃金を上げない企業、店舗も多いのです。
例えば、最近の都内のアルバイトの平均時給を千円とすれば、千円で募集しても良い人を取れる可能性は非常に低いのです。が、もし時給を2千円にすれば、非常に優秀な人手の確保ができ、一気に人手不足が解消する可能性があるのです。
ところが、企業、店舗側の事情として、生産性(売上)が上がっていないので、給与を上げられないというつらい事情があるのです。
賃金が低く、上がらないような魅力的でない仕事は、応募者が減少し応募者の質が下がるのは当然です。
3.従業員のレベルが低い
業界全体の賃金が低いので、他業種では採用してもらえないような、レベルの低い応募者しか応募しない悪循環になります。そのため従業員1人1人のレベルが低く、従業員の人数はいても1人あたりの能力が低くなります。結果として、人手不足に陥るのです。
従業員のレベルが高くキビキビと働いているような店では、従業員数が多くなくても人手不足に陥ってはいないのです。
このようになる原因は、賃金を含めた待遇の問題、働く環境と、社内文化、組織内での教育の問題です。教育指導の時間が取れなかったために、価値観の共有ができておらず、スキルも上がらなかったということも原因のひとつです。
4.飲食ビジネス、麺ビジネスの本質的な課題
日本のほとんどの飲食ビジネス、麺ビジネスは、サラリーマンを対象にしています。そのために、ランチへの集中度が非常に高く、昼の一刻のためにたくさんの従業員を配置し、アイドルタイムに人は要らなくなります。
これはシフトを組む上で非常に難しく、どうしても昼の一刻は過労働になり、アイドルタイムは人余りになります。
要するに、一番忙しい時間帯にしっかりスタッフの必要人数を入れられず、比較的余裕のある時間帯に多くのスタッフが働いている、人件費のロスのある状態になっています。
うどんそば、ラーメン店のような麺ビジネスではこのような営業状態になっているので、「ランチ時間帯は十分な人員が確保できていない」という意味での人手不足が発生するのです。
5.ビジネスモデルが良くないので、十分な人件費を払えないという問題がある
最近の事例では、多くの新規開業者が非常に小さい店を作り、十分な人件費を払えないことが多いのです。たいてい、売上規模は席数の多少に比例し、席数が小さいほど売上が低く、利益の確保が難しいのです。
要するに、人件費に限界があるということです。スタッフを増やしたいけれど売上が伸びないので、増やせないことが多いのです。
6.ビジネスが人手不足に陥ると、良いことは何もない
現在の日本では、人手不足は当たり前の現象となっています。日本中が人手不足に悩まされているので、多くのビジネスが人手不足を当たり前の現象として捉えている大きな問題があります。
人手不足を当たり前ととらえないで、危険信号としてシッカリ対策を立てることが重要です。
- 人手不足を軽く考えないこと!
- 人手不足は存続の赤信号!
人手不足は下記のような多くの悪魔のサイクルを引き起こし、負のスパイラルを起こします。
7.人手不足が引き起こす、最初の悪魔のサイクルとは?
人手不足が起きると最も怖いのは、店舗全体の品質が徐々に下がり、単に店が回らなくなるだけではありません。商品力、サービスレベルが落ち、結果、店舗全体のパワーが落ち、集客力が落ち、売上が下がり、利益が出なくなるという悪魔のサイクルに陥るのです。数年前には輝いていた店が、くすんでしまっている事例はたくさんあります。
もし、このような悪魔のサイクルに陥ると、飲食店として成り立たなくなります。最終的には閉店に追い込まれますが、そこに至るまでに下記のような現象が起きるのです。
8.お客様の不満による悪魔のサイクル
ホールの人員不足では、注文を長く待たせたり、レジが遅くなったりするホールでのサービスレベルが下がります。厨房の人手不足のため、厨房では料理の品質が落ちたり、提供時間が長くなったりします。
上記の結果、お客さまの満足度は下がり、不満度が上がり、来店客数が減り、売上が下がります。その結果利益が減り、人件費とか、さまざまな経費を削減せざるを得なくなるのです。
原材料をケチると、商品のレベルが下がります。人件費を減らすと、サービスレベルがさらに下がってしまいます。その結果、お客さまの数がさらに減少してしまいます。
9.従業員の不満による悪魔のサイクル
人手が足りなくなると、厨房・ホール共に、足りない人数でオペレーションを回さざるを得なくなります。少ない従業員にさらに負担が大きくなるのです。
結果、過負荷労働とか長時間労働になり、労働環境の悪化に伴い、さらに辞めるスタッフが増えます。退職者の増加で、さらに労働環境は悪くなります。結果、店舗の営業を継続できなくなってくるのです。
第二章 人手不足の本質的な解決策に続きます
1.生産年齢人口の減少だけではなかったのです。
最近、人手不足の原因として最も話題になったのは、「団塊世代の引退」と生産年齢人口の(15歳から64歳までの働き盛りの人口)の減少です。 下図1は、総人口、生産年齢人口、若年者人口(14歳以下)、高齢者人口(65歳以上)を示している有名な関係図です。 これから明確に分かる通り、現在の日本の総人口はピークからほとんど減少していないのです。 ところが生産年齢人口は、1995年のピークから2019年までの24年間で15%も大きく減少しています。この生産年齢人口の大幅な減少が、人手不足の最も大きな原因だと言われてきました。2.生産年齢人口はピークから大きく減少しているが、就業人口はその間ほとんど変化していない
総人口 | A生産年齢人口 | B就業人口 | 会社数 | 医療 福祉 労働者 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単位 | 千人 | 千人 | 比率 | 減少数 | 千人 | B/A | 万社 | 千人 | 対 2002年 増加数 |
1995 | 125,570 | 87,160 | 100.0% | 0 | 67,210 | 77.1% | |||
1996 | 125,859 | 67,280 | 6,503 | ||||||
1997 | 126,157 | 67,770 | |||||||
1998 | 126,472 | 66,990 | |||||||
1999 | 126,667 | 66,090 | 6,185 | ||||||
2000 | 126,926 | 86,220 | 98.9% | -940 | 65,610 | 76.1% | |||
2001 | 127,316 | 65,370 | 6,119 | ||||||
2002 | 127,486 | 64,610 | 4,300 | 0 | |||||
2003 | 127,694 | 64,640 | |||||||
2004 | 127,787 | 65,010 | 5,710 | ||||||
2005 | 127,768 | 84,090 | 96.5% | -3,070 | 65,480 | 77.9% | |||
2006 | 127,901 | 65,800 | 5,703 | ||||||
2007 | 128,033 | 66,080 | |||||||
2008 | 128,084 | 64,090 | 6,000 | 1,700 | |||||
2009 | 128,032 | 63,140 | 5,854 | 6,230 | 1,930 | ||||
2010 | 128,057 | 81,735 | 93.8% | -5,425 | 62,980 | 77.1% | 6,560 | 2,260 | |
2011 | 127,753 | 81,303 | 93.3% | -5,857 | 62,930 | 77.4% | 6,780 | 2,480 | |
2012 | 127,498 | 80,173 | 92.0% | -6,987 | 62,800 | 78.3% | 5,423 | 7,080 | 2,780 |
2013 | 127,247 | 78,996 | 90.6% | -8,164 | 63,260 | 80.1% | 7,380 | 3,080 | |
2014 | 126,949 | 77,803 | 89.3% | -9,357 | 63,710 | 81.9% | 5,509 | 7,600 | 3,300 |
2015 | 126,597 | 76,818 | 88.1% | -10,342 | 64,010 | 83.3% | 7,880 | 3,580 | |
2016 | 126,193 | 75,979 | 87.2% | -11,181 | 64,650 | 85.1% | 8,110 | 3,810 | |
2017 | 125,739 | 75,245 | 86.3% | -11,915 | 65,300 | 86.8% | 8,140 | 3,840 | |
2018 | 125,236 | 74,584 | 85.6% | -12,576 | 66,640 | 89.3% | 8,310 | 4,010 | |
2019 | 124,689 | 74,011 | 84.9% | -13,149 | 67,973 | 91.8% |
3.人手不足の最も大きな原因は、付加価値の低い介護、医療、運送などに多くの人手が取られているため
人手不足の大きな原因は上記の様に、現在の日本がリーマン前のような輸出主導型ではなく、個人消費や公共投資といった労働集約のような内需主導型であることの影響も少なくないといえます。 従って消費は、個人消費、政府消費とともに底堅く増えて行く可能性が高く、政府消費は、学校や警察などの公共サービスに加え、医療・介護などがここに含まれるため、高齢化に伴って需要が拡大して行く分野です。 2002年以降、医療・福祉分野での雇用者は430万人(現行データがさかのぼれる2002年1月)から748万人(2017年2月)へと318万人も急増しています。需要サイドの要因としては、(必要不可欠ながらも)低付加価値の職種が増えることで、その分野に雇用が吸収されています。 雇用全体では同期間に451万人増えていますが、増加分の70.5%を医療・福祉が占めているのが、人手不足の大きな要因なのです。4.若年層は過去20年間で3割も減った
人口減少は少子化が原因であり、少子高齢化はかなり前から進んでいましたから、総人口は横ばいでも人口構成は大きく変化しています。 1997年と2017年を比較すると、15歳以上、30歳未満の若年層人口は約32%も減少しました。 一方で65歳以上の高齢者人口は79%も増加しています。 この間、総人口はあまり変わっていませんから、経済全体の総需要もほとんど変化していません。 (高齢者の消費は現役時代と比較すると落ちますが、基本的な衣食住への支出はそれほど変わらないのが普通です)。 需要が変化しないのに、それを満たす製品やサービスの提供に従事できる人員は減っていますから、当然の結果として人手不足が進行するのです。 特に、外食産業や小売店など、若い従業員をたくさん必要とする業界で人手不足が顕在化したのは、若年層人口の減り方が激しかったからなのです。 人手不足分野では、相対的に高付加価値の専門的・技術的職業と、対人的なサービスの職業(含む介護関係の職種)や輸送・機械運転の業務、ならびに運転や建設など現場業務への二極化が進行しています。 2017年7月3日に日本商工会議所が発表した「人手不足等への対応に関する調査」では、「人手が不足している」という回答が最も多かった業種は宿泊・飲食業でした。 次いで、運輸業、介護・看護、建設業などが続きました。5.飲食ビジネスにおける強烈な人手不足の実態
これからの20年は、日本の多くの中小、零細ビジネスが淘汰されるプロセスの始まりです。 人手不足は企業規模の大きいところよりも、小さいところに集中しているのです。 人手不足こそが、生産性の低い、弱いビジネスを抹殺する張本人なので、決して軽く考えないことが大切です。人材不足は既存の飲食ビジネスにとってマイナスばかりであるだけでなく、ビジネスの存続に影響する一番重要なファクターです。 人手不足の結果、飲食ビジネス、麺ビジネスに起きている現状は次の通りです。1.いくら募集しても応募がない
正社員、パート、アルバイトともに採用市場の競争は厳しく、うどんそば店、ラーメン店は、働く人にとって魅力のないビジネスです。なので、求人広告を出しても応募がほとんどなく、もしあっても採用レベルにほど遠い人が来るのです。 このような人を採用しても、麺ビジネス特有の労働環境の厳しさについてこれず、すぐに辞めてしまうのです。 もし辞めても、人手不足市場の現状により、他の仕事がすぐに見つかるので、我慢して辞めないという必要がありません。「我慢して、プロになり、道を究める」というプロ意識を持った人はいないに等しいのです。2.飲食店の仕事は厳しいわりに、賃金が低く、優秀な人を採用できない
求人が増え人手不足の状況になると、一般的には賃金も上昇します。ですが、厚生労働省が発表している物価上昇率を考慮した“実質賃金”は、1996年頃をピークに減少傾向が続いています。 これは世界の先進国の中で唯一、日本の大きな課題です。日本の賃金は過去25年間、ほとんど上がっていないのです。 理由の1つとして考えられるのは、非正規雇用者数の増加です。 (厚生労働省の資料によると、非正規雇用労働者数は平成6年から緩やかに増え続けている) 本来であれば企業側も正社員として雇用し、賃上げをし、非正規雇用者を正規雇用に切り替えるという形がよいのです。しかし現状、正社員の人数は増えていないのです。 これは企業側と働く側の双方の問題で、働く側も正社員として働くよりも非正規雇用を望む人が増えているのです。 人手不足が続いているのに、従来と同じ採用条件で求人し、賃金を上げない企業、店舗も多いのです。 例えば、最近の都内のアルバイトの平均時給を千円とすれば、千円で募集しても良い人を取れる可能性は非常に低いのです。が、もし時給を2千円にすれば、非常に優秀な人手の確保ができ、一気に人手不足が解消する可能性があるのです。 ところが、企業、店舗側の事情として、生産性(売上)が上がっていないので、給与を上げられないというつらい事情があるのです。 賃金が低く、上がらないような魅力的でない仕事は、応募者が減少し応募者の質が下がるのは当然です。3.従業員のレベルが低い
業界全体の賃金が低いので、他業種では採用してもらえないような、レベルの低い応募者しか応募しない悪循環になります。そのため従業員1人1人のレベルが低く、従業員の人数はいても1人あたりの能力が低くなります。結果として、人手不足に陥るのです。 従業員のレベルが高くキビキビと働いているような店では、従業員数が多くなくても人手不足に陥ってはいないのです。 このようになる原因は、賃金を含めた待遇の問題、働く環境と、社内文化、組織内での教育の問題です。教育指導の時間が取れなかったために、価値観の共有ができておらず、スキルも上がらなかったということも原因のひとつです。4.飲食ビジネス、麺ビジネスの本質的な課題
日本のほとんどの飲食ビジネス、麺ビジネスは、サラリーマンを対象にしています。そのために、ランチへの集中度が非常に高く、昼の一刻のためにたくさんの従業員を配置し、アイドルタイムに人は要らなくなります。 これはシフトを組む上で非常に難しく、どうしても昼の一刻は過労働になり、アイドルタイムは人余りになります。 要するに、一番忙しい時間帯にしっかりスタッフの必要人数を入れられず、比較的余裕のある時間帯に多くのスタッフが働いている、人件費のロスのある状態になっています。 うどんそば、ラーメン店のような麺ビジネスではこのような営業状態になっているので、「ランチ時間帯は十分な人員が確保できていない」という意味での人手不足が発生するのです。5.ビジネスモデルが良くないので、十分な人件費を払えないという問題がある
最近の事例では、多くの新規開業者が非常に小さい店を作り、十分な人件費を払えないことが多いのです。たいてい、売上規模は席数の多少に比例し、席数が小さいほど売上が低く、利益の確保が難しいのです。 要するに、人件費に限界があるということです。スタッフを増やしたいけれど売上が伸びないので、増やせないことが多いのです。6.ビジネスが人手不足に陥ると、良いことは何もない
現在の日本では、人手不足は当たり前の現象となっています。日本中が人手不足に悩まされているので、多くのビジネスが人手不足を当たり前の現象として捉えている大きな問題があります。 人手不足を当たり前ととらえないで、危険信号としてシッカリ対策を立てることが重要です。- 人手不足を軽く考えないこと!
- 人手不足は存続の赤信号!