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新規ラーメン店開業の42%が1年以内に閉店。72%が3年以内に閉店しています。
今や世界的に人気のある飲食であるラーメン業界。世界中の主要都市に行けば必ず、日本発を伺わせるラーメン店がを見つけることができます。経営者にはサイドビジネスとしても人気のラーメン店開業ですが、データで見ると新規のラーメン店開業の42%が1年間もたずに閉店し、72%が3年以内に閉店しています。思いの他に難しいラーメン店の経営とお店作り。数字だけ見ると一般企業の廃業率と変わりありません。果たして、閉店しない法則性やコツはあるのか。10のポイントに分けて調べてみました。
ラーメン店開業の準備にあたって失敗しない10のポイント
(ポイント1)情熱(パッション)
事業を興す動機でありがちな「儲かりそうだからそれをやる。」は、どうやら失敗事例でよくある動機でもあるようです。サラリーマンをやっていて会社や仕事がおもしろくないからラーメン屋を開業するなども、同じく失敗するパターンのよくある例のようです。
NIKE の創業者フィル・ナイトはNIKEの事業が成功した理由の一つに「情熱があること」をあげています。どうすれば事業が良くなるのか、靴の製造や販売に命を懸ける事を自身の著作で説いています。チームに天才は1人もいない。その代わり情熱に勝る能力がないことを教えてくれています。これをラーメン店開業に置き換えると「儲かりそうだからなんとなくやってみよう」ではなく「ラーメン店の経営に命を懸けることができるか」という自問自答からラーメン店の開業が始まる事を示していると言えるでしょう。
「ラーメン店の経営は自分にとって命を懸けるべきビジネスか?」その自問自答の答えはラーメン店でアルバイトをすればよいということでは無いようです。例えば、ダメな店で修行する事によって変なクセがつくかもしれません。また、優秀なラーメン店は修行お断りのところも少なくありません。仮に働けたとしても研修の場合はお金を要求される事もあります。または皿洗いばかりさせられて「こんなはずじゃなかった」という声を聞く事もあります。アルバイトで自分自身の情熱を測るのは少し難しいかも知れません。
その代わりにラーメン学校に通ってみるのは良いかもしれません。あるラーメン学校の卒業生のラーメン店の開業率は30%しかないそうです。ラーメン学校で自らを見つめ直し、理想と現実のギャップを感じた人が70%もいるのは意外かも知れません。しかし、お金と一度しかない人生の大切な時間を無駄にしない為にも自分に情熱があるのかどうは考えておいたほうが良いでしょう。情熱はほとんどの場合、自分で気づく事ができないのです。
(ポイント2)素直さ
我々の社会は先人が作ってくれたノウハウを学んだ上で成り立っています。ラーメン店を開業させるために必要な要素のほとんどは、自分以外の他人から学んで自分のスタイルを築くので、素直さがないとよい情報がインプットがされることはありません。
ラーメン店を新規開業した後でも、毎日が勉強になる事は間違いありません。新しい事にチャレンジしていくにはやはり素直さが必要です。
(ポイント3)一貫性
一貫性、ここではブレない事だと思ってください。現代人は外部から情報が入ってしまうと考えを変えてしまうことが多いです。その考えの変化の一部を「ブレる」と言って良いでしょう。例えば、マクドナルドが大失敗した事例。QSCVを大切にしてきたマクドナルドはある時期にハンバーガーを半額まで値下げしました。結果、売上を増加させる事に成功しますが値段を戻した途端に客離れが起こります。値段を変えてしまったのが原因で顧客のマクドナルドに対する価値観が変わったのです。
これは単に値段変更はダメだということではありません。メニューを変えてはダメという事でもありません。自らが決めたビジョン、ミッションを貫く事が大切だと言う事です。開業前の皆さんにはコンセプトと言う言葉がしっくり来ると思います。ラーメン店においては、こだわりやコンセプトがブレると客足が遠のきやすいと言うと分かりやすいかもしれません。メニューが多くても、少なくても繁盛しているお店はたくさんあります。コンセプトに一貫性のあるお店作りを心がけましょう。
(ポイント4)周到な準備
開業直後の大きな失敗談として上がるのはオープン前の店内トレーニングです。最悪の場合、オープンの1日前、2日前のトレーニングだけで開店してしまうケースがあるようです。そう言った場合のほとんどは店内オペーレーションが混乱するそうです。多店舗展開していて規模がある企業の場合は、他店から経験のあるプロに現場へ出てもらう事が一般的です。有名ラーメン店の場合は開店前トレーニングに2ヶ月かけるところもあります。それだけオープン前の準備は大切だと言う事なのです。新規でラーメン店を開業する場合、そのオープン前トレーニングの大切を知らずに開業して後悔してしまう事が多いようです。最近は来店したお客様が不満を持つとSNSにイメージが悪くなるレビューを書かれる事も想定しなくてはなりません。だとしても、オープニングの準備に2ヶ月掛けられるだけの資金の余裕は新規開業者にはないと思います。そんな時は開店時にチラシを撒いたり、WEB広告を打たない。と言った戦略が逆にオープニングの混乱を避ける事に繋がるようです。チラシやWEB広告を打たない場合、開店時に1日1組なんて事もあるようです。しかし、ゆっくりと少しづつお客様対応することで、想像もつかなかったアクシデントや接客に対して次第に慣れていくことができるようです。長期的に見るとオープニング時の売上よりも、ダメな口コミを発生させない事の方が結果としてプラスに繋がると言えるでしょう。
(ポイント5)価値観
ビジネスの本質は何か?経営の本質とは何か?ラーメン店を開業する前にそんな事を考える人は少ないかもしれません。しかし、少なくとも価値観については開業前に考える必要がありそうです。ここでいう価値観とは、ラーメン店を開業をするにあたって何を優先するかの順序だと思ってください。どんな価値観でビジネスをするかと言う事は、言い換えるとどんな優先順位でビジネスをするかと言う事ができます。
東京ディズニーリゾートの価値観は以下の通りです。
- Safety(安全)
- Courtesy(礼儀正しさ)
- Show(ショー)
- Efficiency(効率)
2011年3月11日、ディズニーリゾート園内では震度5強の地震を観測しました。普段、迷子のアナウンスさえ流さない園内放送も発災40秒後には多言語で地震の事実と被害状況放送したそうです。また、売り物であるぬいぐるみを配り頭を守るように。そしてお菓子を配り、お客様の安全を最優先したとの事です。当日、園内から出て帰宅した人はほんの少しで、ほとんどが園内で一夜を過ごしたそうです。お客様に帰っていただくよりも園内にいていただく方が安全と判断したのでしょう。あの日は寒い日だったのを皆さんも覚えているでしょう。徹底した安全が最優先されていると言う事が誰でも理解できます。
一方で同じ日のJR東日本は夕方から全線の運転を終日見合わせるのと同時に主要駅のシャッターを降ろして駅を閉鎖しました。多くの帰宅難民者が寒い中、文字通り「路頭に迷った」のではないでしょうか。他の私鉄はその日のうちに復旧し、その後も最後まで運行を続けました。この日は鉄道各社の対応がかなり違っていました。それだけ混乱する日だったとも言えます。都内の人には大変な1日だったはずです。JR東日本からすると駅を閉鎖しないと線路内に降りて行ってしまう人が発生するだろうと考えたかもしれません。閉鎖は仕方なかった部分もあるでしょう。当時の副社長は、当日の事を後日「復旧の仕方、優先順位の付け方などまだまだ改善すべき点があった」と報道陣に答えています。また同年6月23日、JR東日本は、「大規模災害に備えて主要都市に飲料水や毛布、医薬品などを備蓄して帰宅困難者を受け入れる方針」を発表しています。「大きな企業の対応」だと言う事を考えて見ると全て後手に回っている気さえします。
この差異はどこで生じたのか?紛れもなく価値観の違いです。優先順位が大きく影響していると言えるでしょう。特にJR東日本の対応からは、価値観や優先度がはっきりしていないと従業員もお客様も困ってしまうと言う事が分かります。ラーメン店だって同じです。火災や爆発が絶対にないとは限りません。近所のお店でも事故や局所的な災害が発生する事はあります。そう言った想定外の事に対しても、判断を迫られることがあるでしょう。決して他人事ではありません。
また価値観は現場対応の話だけではありません。Googleでは「世界にインパクトを与える。」と言う価値観に共感した人が集まって働いています。では「お金を儲けをする」ではどうでしょうか。この場合はお金儲けを最優先する人が集まるでしょう。しかし、ほとんどの場合、企業の利益ではな自身の利益追及になるかもしれません。価値観は採用にも影響します。開業前にしっかりと考えて見ましょう。
(ポイント6)トップを目指す
日本で一番高い山は何でしょう?正解は富士山です。かんたんな質問です。では日本で2番目に高い山は何でしょう?多くの人が答えられません。世間一般の皆さんは業界1位は知っていても2位は知らないのです。更に言うとインターネットが発達して情報の到達が早くなった今日では、地域一番でも有名になれません。開業時の目標は高ければ高いほど良いと言えるでしょう。また開業後の目標が世界レベル地域レベルでは、やらなくてはいけない戦略や戦術が違ってきます。目指す方向性によって行動が違ってくるので成長の幅が違うと言えるでしょう。
(ポイント7)他店の真似しない
実はセルフサービス式のうどん店を広く世に知らしめたのは、はなまるうどんがパイオニアと言われています。はなまるうどんの成功を知った多くの店が、セントラルキッチンとセルフサービスのスタイルを真似をして失敗してしまいました。そんな中、丸亀製麺は製麺機を全店に置いて、打ち立て、茹で立てのうどんを提供して成功しました。売れている店があるからといってそのやり方を真似をしてはいけません。ラーメン店に置き換えると今更「博多で豚骨ラーメン店を開業する。」ようなもの。豚骨ラーメンで有名な一風堂は「豚骨ラーメンの常識を覆す」そんな想いから事業を世界規模にまで展開しました。真似をして世界展開までを成し得たのではなく業界にないもの「常識はずれの豚骨ラーメンとモダンジャズの流れるオシャレな店舗」を新しく作って成功を収めたのです。
(ポイント8)際立った個性
前述で真似をしない事をお伝えしましたが、真似をしない事と同様に、際立った個性を持つ事もラーメン店を繁盛させるには重要になります。例を上げるとたくさんあるとは思いますが、函館のラッキーピエロと言うバーガーショップは、全店舗内装や外装が違います。サンタクロースがテーマの店があれば、サーカスがテーマの店もあります。函館市内に約17店舗展開していますが、マクドナルドが2店舗でモスバーガーが1店舗しかない事を考えれば如何にラッキーピエロが強いかお分りいただけるかと思います。強烈な個性はファンを獲得するための最大の武器になります。日本中からライバルが見にくる店になればピンチどころか、勝手に知名度が上昇していくでしょう。広告宣伝費がゼロになるかもしれませんね。ラーメン業界で最近話題のMENSHOさん、ソラノイロさんも他にはない独創的なメニューで有名です。際立った個性というものは「メニューが他にはない」と言う事ではなく、業界に今ままでなかったものを提案して、その業界の課題を解決すると言う事もお忘れなく。
(ポイント9)資金の余裕
ラーメン店を開業してビジネスを始めると、経営者のストレスは大きく3つあると言えるでしょう。人、売上、お金。この3つのストレスの中で開店前に不安要素として取り除きやすいのはお金でしょう。できればお金の余裕はある方がいいです。借金があっても現金があれば倒産する可能性は低くなります。逆に資金が底を尽き掛けると資金繰りに慣れない経営者は情緒不安定になり、正常に経営判断ができなくなる事もあります。とは言うものの、多くのラーメン店開業を目指す人は借り入れを前提に考えているのではないでしょうか。実は借金というものは、事業をスタートする時が一番お金を借りやすいと言われます。
ですので、きちんと経営判断をしないと大きな額の借金を背負うことになります。例えば、脱サラで貯金ゼロ、借金ゼロで始めようとうしている人がいるなら、開業を諦める事をお勧めします。最低ラインの話をすると、年齢が若ければ無理をしても良いでしょう。ただし、60歳代などで開業を目指す場合は自己資金100%で行う事をお勧めします。高齢になっての借金は若い時とは違い同じ額でも大きなストレスになります。
<借入OKパターン>
半年間、売上が無くても問題ない資金繰り状況
30歳代前後の若い人は失敗覚悟でもOKだが、失敗時の返済計画の現実性が肝心。
定年退職のまとまった退職金はOK。ただし、無理のない範囲で。
<借入NGパータン>
親・兄弟からの借金はNG。家族は最後の切り札と考えましょう。
定年退職後の借金はNGです。
50歳代前後の貯金無し、借入100%。
<豆知識>
借り入れは担保無し、保証人無しが理想。
日本政策金融公庫などからの借入をお勧めします。
厨房機器のリースも吉。初期投資を減らすためには効果的です。
以上、箇条書きでまとめてみました。多くの開業エピソードを聞く限り、借入の一番NGパターンは親、兄弟から借金をすることです。家族はうまく行かない時の切り札です。最初から家族にしか、借金が出来ないのであれば、開業はあきらめましょう。
(ポイント10)諦めないこと
上述では、高齢で自己資金がない場合は借入での開業はあきらめましょう。と言いながらここでは諦めない事について説明します。ビジネスは建築物のように構造体を持っていて、様々な要素で構成されています。一つを見ると全体が見えずに、全体を見ると一つが見えづらく、全てを瞬時に把握するのには経験や知識が必要です。この複合的な経験や知識・スキルを経営レベルと言っていいでしょう。例えば、ラーメン屋のメニューを一新したとします。メニューを一新したその日に売上への顕著な影響を確認できることは稀です。ほとんどの場合は1日で判断する事ができないので長期的にみて判断せざるをえません。しかし、ラーメン店も利益を出さなければなりません。早めに状況を判断して次の手を考えなければなりません。誰かがちょうど良いタイミングを教えてくれる事はありません。ビジネスにはタイムラグがあるのです。
そして、このタイムラグを読むための忍耐力こそ、経営者がビジネスを長期的に行うのに必要で養っていかなければならない能力になります。ラーメン店を開業するにあたっては美味しいラーメンを作る事と、会社を経営する事、それぞれに忍耐力が必要です。例えば、あるラーメン屋さんの場合1000回以上の試作と、200人以上の試食を行っても「これだ!」という味にならずに商品が完成しなかったという例があります。忍耐力のない人であれば、どこかで妥協して開業してしまい失敗してしまったかもしれません。ラーメン店では同じ味を毎日出す必要がありますが、同じ味だと感じるには真夏と真冬では微妙に素材や調味料を調整しなくてはなりません。「同じ味の法則性」を出すにはやはり忍耐力が必要です。ラーメンは誰にも負けない最高の一杯、経営も最高の経営を目指して試行錯誤を繰り返す忍耐力が大切になります。
以上、ラーメン店を開業するにあたって失敗しない10のポイントをお伝えしました。せっかく開業するのであれば、長く続いて欲しい。ラーメン好きのお客様もそう願っているはずです。また地域の人々は皆さんのお店が世界中で人気のラーメンになると嬉しいはずです。頑張ってみてください。