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先週の本社のラーメン学校では、ほとんどのラーメン通りでも見たことのない、タコのラーメンとイカのラーメンを披露しました。
先月の東京のラーメン学校でも、タコのラーメンを始めて作ってみましたが、実際に作ってみると、これからの新しいラーメンとして、そして、付加価値を付けて、ラーメン業界に新しい風を吹き込むアイテムとして、十分な可能性を感じました。
以前から、ラーメン業界には1000円の壁が立ちはだかっていましたが、それを簡単に超える方法として、高価な食材を使うことにより、簡単に壁を破ることが出来るのではと、私は考えていました。
私がこのことについて、常に頭に浮かぶのは、名古屋の熱田神宮近くにある、ひつまぶしの熱田蓬莱軒です。
うなぎという高価な食材を使い、ランチで4千円~5千円、デイナーで5千円~6千円という高価格帯の客単価なのです。
私も当社のスタッフと何度も蓬莱軒に行きましたが、実際に食べてみると、価格について高いという感覚は一切ないのです。
この商品価値であれば、この価格は、当たり前という感覚です。
ひつまぶしとラーメンとか、麺料理には深い関係性があるのです。
ひつまぶしの構成要素は、トッピングとしてのうなぎのかば焼きを食べやすい大きさに刻んだものを炊き立てのご飯の中と上に、敷き詰めていて、うなぎのかば焼きのたれがご飯に染み込んで、うなぎとご飯の最高のコンビネーションで、通常のうな重とか、うなぎのどんぶりでは、成しえなかった料理に昇華しているのです。
これは、炊きたてのご飯を茹でたての最高に美味しい麺、そして、たれに相当するスープ、更にトッピングとのコンビネーションは、まさに、麺とスープとトッピングの最高のコンビネーションが揃ったラーメンそのものと変わらないのです。
そこで、トッピングにそれなりに高価で、値打ちのある食材を使い、それらと「麺とスープが最高にマッチング」するような料理に仕上げることにより、簡単に千円の壁を破ることができると考えたのです。
そこで、私が考えたのは、太い大タコの足の茹でた もの、そして天ぷらにしたものを準備し、それに合うスープと麺を準備しました。
麺は、麺学校の講師でもある孫さんに多加水のつけ麺用の手打式製麺機で、十分な熟成時間を取って、作って貰いました。
参考:熟成とは?(美味しいラーメンの麺生地を作るために1回目の熟成)
そして、スープは魚介系の材料8%で作った、魚介だけのスープにトマトを少し、ブレンドし、更に魚介の香味油、ラー油を組み合わせてみました。
社員始め、学校の生徒さんたちには、非常に好評で、特にフィジーからの生徒さんは、周りが海で、タコはよく取れるので、ぜひ、やってみたいとのことでした。
許容範囲が非常に広い多加水ラーメン!
今回、ラーメン学校で孫さんに作って貰った多加水ラーメンはすべて国産小麦で、ベース粉はうどん用小麦粉のうどん日本を80%、力付け(りきづけ)用に、パン用国産小麦のはるゆたかを20%使い、最終タンパク質は約9.4%付近です。
そして、かん水と塩はそれぞれ対紛1%、麺サイズは細いもので2×2mm、中間で2.3×2mm、太いもので2×3mmの3種類を準備しました。
茹で時間はラーメンで食べる場合とつけ麺の場合では異なりますが、細い麺ではラーメンで3分、つけ麺で4分程度でした。
かん水と塩の割合については、どの様なスープと合わせるかで、もっともっとバランスを変えることが出来ると思いました。
例えば、かん水濃度はもっと落として、塩の濃度をもっと上げてもラーメンの種類によっては、美味しいラーメンになることが分かりました。
(参考:かん水とは?)
その結果、上記のタコとイカのラーメンには、2×2mmが最適で、つけ麺には大きいサイズ、淡麗系の味噌ラーメンには、中間サイズが最適でした。
このように、麺サイズとスープのバランスの微妙なマッチングも非常に重要であることが改めてよく分かりました。
このテストを行なっているときに、3年前のラーメン学校に参加し、現在、非常に成功しているラーメン店店主が参加していて、一緒に多加水ラーメンを食べ比べしましたが、今までのこのような多加水(50%近い)を作ったことがなかったので、その自然な食感に非常に驚いていました。
下記の画像は、大たこのラーメンとイカのラーメンの参考盛付です。
スープはいずれも魚介系だけでしたが、香味油だけで充分にラーメンの雰囲気が出ます。
麺だけ食べて美味しいラーメン!
前の記事では、「麺 gogo」 さんが書いている「#1 ほとんどの人が気づいていない麺そのものの味」のご紹介で、麺だけ食べて美味しいラーメン!をご紹介しました。
「麺 gogo」さんによれば、下記のように、麺の味が美味しいのは全体の約1%
ラーメンが好きな人は多い。
しかし美味しい麺は何も付けずに茹でただけでも美味しく食べられる。
噛んでいると小麦のほのかな甘い香りが鼻に抜ける。
しなやかなコシと気持ちの良い歯切れいつまでも噛み続けていたい幸せの麺体験だ。
以上の「麺 gogo」 さんのブログを受けて、早速、当社のレシピで作ったのが、上記の麺です。
当然、出汁をつけないで、麺だけを食べて美味しい麺を作り上げました。
ラーメンの場合は、麺だけ食べて美味しいと言われる麺を作る難易度は非常に高いのが現状です。
その最も大きな理由が、過去、ラーメン業界では仕入麺が主流であり、製麺業で作っている仕入麺は、ほとんど全てが大量生産用のロール式製麺機で作られているので、ロールで強く圧力がかかっており、多加水麺手打ち式製麺のような麺だけ食べて美味しい麺作りはほとんど経験がないのです。
もともと、麺だけ食べて美味しいと言うような概念がなかったのです。
ところが、当社はもともとさぬきうどんの本場で産声を上げ、美味しいさぬきうどん作りの製麺機の開発に精魂を傾けてきました。
さぬきうどんとか、蕎麦等は、出汁を付けずに麺だけ食べても美味しい麺は当たり前なのです。
手打式製麺機では、キチンと製麺すれば、当たり前のことですが、これをロール式製麺機で同じようなものを作ろうとすると、製麺機の構造が全然異なるので、至難の業であるのです。
私は、うどん用製麺機「真打」、十割蕎麦用製麺機「坂東太郎」、ラーメン用製麺機「リッチメン」の製麺機の製造販売を通して、本当に美味しい麺作りの研究に人生を傾けてきたので、その難易度の高さが非常に良く分かります。
以下は他の記事と同文ですが、大切なことなので、再度、強調しておきます。
私は、製麺機の開発と製造にほぼ半世紀近くかけて来ているので、製麺機の良さだけでなく、問題点も良く分かっています。
最高に美味しい麺を作ろうと考えた場合の製麺機の最も大きな欠点は、製麺機の過大な力、パワーが強すぎることなのです。
もともと、うどん、蕎麦、ラーメンにしてもすべて、手打ち等の優しい力の手作り製麺でした。
手打と機械の場合の最も大きな違いは、そのパワーの差で、手打ちでは麺生地に加わる力は非常に小さいのですが、機械の場合は、手のような微妙で繊細な加圧力のコントロールが難しいので、どうしても単純で過大な力がかかってしまいます。
すると、麺生地の組織が破壊され、柔らかくて粘り強い麺ではなくなり、硬い麺になってしまい易いのです。
そうならないように、最大限努力している製麺機が「真打」であり、「坂東太郎」なのですがそれでも限界があるのです。
「真打」よりも、もっと手打に近づけたのが、最近開発したフットプレス「AFP-6」であり、「坂東太郎プラス」に付随している「舞姫」であり、蕎麦の練り込み装置の「菊二郎」なのです。
この部分をもっと分かり易く説明すれば、当社の多加水麺用の製麺機の開発思想はすべて、手作りとの競争で、手での製麺を出来るだけ忠実に機械に置き換えてきているのです。
そして、今現在もいかに、手打ちに負けないか、それを凌駕することが出来るかという視点で、製麺機を開発しています。
しかし、これは手作業で製麺可能な多加水麺に関してだけで、中加水とか、少加水麺は初めから手作りは不可能なので、手作業との比較はなく、中加水麺、少加水麺としての新しい食感の追求をエンドレスに行っているのです。
真打(うどん製麺機)の初期の販売時に、プロ中のプロの東京のお客さまとの手打うどんでの品質比較時において、ミキシング直後の第一熟成の効果であり、鍛えた直後の第二熟成の効果でした。
そのころは、まだ麺業界全体に熟成による麺質改善効果が認識されていなかった時期だったので、これはその後、ラーメンの製麺機リッチメンの開発においても、美味しい麺作りに非常に役立ちました。
そして、今回の多加水の麺は手打蕎麦用の専用機坂東太郎プラスとフットプレス「AFP-6」を使用しました。
加水約50%、第一熟成は2時間、第二熟成は1晩の包丁切りの麺の画像は下記の通りです。
沈滞している麺ビジネスの大きな打開策の高品質の多加水麺
このコーナーでラーメン店ビジネスの競争の激しさについて述べてきましたが、その大きな原因が同質化競争(他店との差別化が難しくなり、どの店も似たような商品やサービスを提供してしまう状況 )です。
濃厚魚介のつけ麺店が繁盛しているとなれば、多くの人たちが濃厚魚介のつけ麺店を出し、油そばが良いとなれば、同じように油そばの店に集中し、家系ラーメンの人気があるとなれば、家系ラーメン店が増えてきます。
このように、ラーメン店ビジネスは、常に大きなトレンドで、多くの人たちがそのトレンドに乗ろうとして動くのです。
そのようなトレンドを追いかけている限り、いつまで経ってもトレンドの先頭にはなれないし、いつも後追いで、乗り遅れになります。
そこで、私が提案したいのは、トレンドに乗るのではなく、世の中の行く先を見定めて、トレンドを創り出す側になることです。
それを理解するのは、ラーメンの進化の歴史を見通せば、次の時代はどのようになりそうかと言うことが見て取れるのです。
人類の歴史は誰か、先駆けている人が想像した通りに実現しています。
自動車にしても、飛行機にしても、携帯電話にしても、それがない時代に先見の明のある誰かが既に見通していたことばかりなのです。
その当時は、その見通しは、あまりにも時代に先駆けていたので、誰も信じなかったのですが、自動車の実現、飛行機の実現も多くの人たちの予想より、はるかに早くに実現しているのです。
携帯電話にしても、私が若い頃には誰も1人1台づつ、携帯電話を持つ時代が来るとは、想像も出来なかったことが現に起きているのです。
私がラーメン業界に未来に描く夢は、誰もが安心して食べることが出来る、健康に良い、最高に美味しいラーメンで、日本中、世界中のお客さまをハッピーにすることです。
ラーメンを食べることで単に、病気でない程度の健康ではなく、エネルギー満ち溢れたラーメンが市場に溢れていることです。
私はラーメン学校を始める20年前に自分自身に誓ったことは、化学調味料とか、防腐剤を使わなければいけないのであれば、ラーメン学校はやらないと決め、無添加、無化調、デジタルクッキングを教えることを決意したのです。
そして、世界中で徐々に無化調でラーメン店を開き、成功する店が増えているのです。
その夢を実現する1つの手段が美味しい多加水の手打式ラーメンだと信じているのです。
多加水手打ち式ラーメンの製法は決して、単純ではありませんが、多くの人たちに製法を理解し、広めて頂き、今までラーメンをあまり食べなかった人たちにも広めていきたいと思っています。
上記の大タコのラーメン、イカのラーメンはそのようなラーメンになると思っています。
消費者の食感に対する大きな嗜好の変化
私はうどん、蕎麦、ラーメンのようなランチ集中型のビジネスは、ビジネスとしての生産性を上げるために、カフェとの融合が大きな方向性だと思っています。
特に、現在の日本において、私のような高齢者の多くは、時間を持て余している人が多く、その時間を美味しい食事、スイーツ、ドリンクで、友人知人との楽しい時間で過ごすことが出来るようなカフェの存在は必要だと信じています。
このような風景は、アメリカの地方都市では、ファミレスがそのような機能を果たし、多くの高齢者であふれている状況を見てきました。
そのような高齢者、女性の問題解決と麺ビジネスをWIN=WINのシナジー効果で結びつけることを行ないたいと思っています。
そして、将来的には、フード(食べ物)とスイーツの境界線がだんだんなくなり、朝食等は、スイーツの様であり、充分な栄養の取れる食べ物になればと思っています。
次の記事では、より専門的な高いレベルになりますが、プロ中のプロを目指し、新しいラーメン作りに情熱を持っていらっしゃる方はぜひ、チャレンジしてみて下さい。