目次
はじめに
長く営業していて、店主が店内にこもっていると、マンネリ化して、最新情報から取り残されてしまう現象が起きています。
実際、大和麺学校(ラーメン学校・うどん学校)の参加者には、「長く経営を続けていて、いつしか売上が伸びなくなったので、現状をリセットしたい」という熱い思いで、参加される方々がときどき見受けられます。
実は私自身も、48年間の大和製作所経営、39年間の讃匠経営の中で、いつの間にかマンネリに陥り、最近反省することが沢山ありました。
先週(2024年3月現在)はうどん学校を20年近く前に卒業し、北海道の湧別で非常に成功したうどん店を最近引き継いだ後継者の方が参加しました。
初代の経営者は、定年まで地元企業の役員をされ、うどん店がしたくて開業された方で、非常に熱心な方だったのです。
うどん学校で習ったことを忠実に実行され、人間より動物の数の方が多いような大変辺鄙な場所にも関わらず、開店告知を一切しないで、開店したのです。
すると、開業日初日の来店者はほんの数人だったのですが、1週間後の日曜日には50数名に増え、春頃開店したのですが、夏休みには200人以上の来店があったと聞いていました。
そのように、地元では非常に繁盛したうどん店であったのですが、体調が続かずに、後継者に譲り渡すようになったのです。
後継者の方も非常に活発な方で、学校参加中に、参考になるいろんな話を聞かせていただき、20年近くの時間の経過の重みをひしひしと感じさせられたのです。
当社のうどん学校も20年前に指導していた内容と、現在指導している内容は大きく異なります。
この20年間で、当社の麺学校自体の進化、世の中の変化に併せての大きな変化があります。
ところが、最新の現在の麺学校の様子を過去の卒業生に十分に届けることが出来ていないのです。
また、学校を卒業して新規に開店し、それなりに成功すると、自分の成功パターンが染みつき、そこから抜け出すことが出来ずに、いつしか世の中の流れから取り残されている事例もたくさん見てきました。
このような事例を見て、今後の麺学校の在り方について、大きく考えさせられました。
今後の当社の麺学校の課題は、卒業した生徒さんに常にアップデート出来る最新情報を伝え、生徒さんが地域一番店として、勝ち続ける状態を作ってあげることが重要だと言うことが良く分かりました。
今回の記事では、うどん学校の生徒さんからの経営講義の授業中の質問を取り入れながら、今後の麺ビジネスの在り方について、深く切り込んでいきます。
お客さまに喜んで頂いて、価格を上げるためどうすれば良いか?
上記の質問は、近々オーストラリアで開業予定の生徒さんからの質問でした。
この生徒さんはオーストラリアの標準的なうどん価格(豪州$25、約2500円)と価格設定していました。
私は、この生徒さんの事業計画書のチェックを入れていった折に、オーストラリアの生徒さんのディナーの価格を1.5倍~2倍の4000円に設定しました。
すると、生徒さんより上記の質問(お客さまに喜んで頂いて、価格を上げるためにはどうすれば良いか?)があったので、それに私は回答したのです。
付加価値とニーズとの関係で、この生徒さんに、ご説明したのですが、みなさまにも詳細をご説明します。
最も分かり易く説明出来るのは下図のようなニーズ(顕在、潜在)と付加価値の関係です。
これから、コロナ後の新しい生産性を高めなければいけない時代に私たちが最も考えなければいけないのは、付加価値を高め続ける戦略です。
お客さまが、その価格は価値があると判断して、喜んで払って貰える付加価値を届けることなのです。
それを説明するために下図を参考にしてください。
最初にオーストラリアの生徒さんが検討していたのが、通常価格で豪州$25で、2500円程度だったのです。
もちろん日本人からみれば、この価格はとんでもなく高いと思うかもしれません。
しかし、欧州では通常価格です。
私が提示した一段上の価格設定(ディナーの価格を1.5倍~2倍の4000円)は、お客さまの潜在ニーズを満たした価格設定なのです。
わかりやすい事例でいえば、カフェのドトールとスタバの価格差は、スタバがドトールの1.5倍です。ところが、どちらがお客さまの数が多いかといえば、はるかにスタバの方が多いのです。
したがって、価格の高い安いがお客さまにとって価値のあるのではなく、スタバの方が、お客さまの潜在価値を満たしているといえるのです。
しかし、このような潜在ニーズは上記の願望価値を満たしている浅い潜在ニーズで、もっと深いところにある予想外価値を満たしている潜在ニーズを掘り当てれば、ビジネスは、もっと加速することでしょう。
お客さまの期待を超える価値の提供とは?
予想外価値を満たしている事例は、ディズニーランドです。
デイズニーランドでお土産のクッキーを購入した福岡のお客さまが、自宅に帰ってクッキーの缶を見てみると、缶が凹んでいたので、デイズニーランドに電話をしたそうです。
すると、デイズニーランドの担当者は、丁寧なお詫びして、交換させて頂きますと言って、福岡までわざわざ現品を持って来てくれたそうです。
これは、期待、願望をはるかに超えた予想外価値なのです。
潜在ニーズを満たすために必要な前提条件
深い潜在ニーズを満足させることができれば、できるほどに、高い付加価値を得ることが出来るのです。それには、基本的な性能、品質の良さは絶対です。
ルイビトン等のバッグ、あるいは、フェラーリを買うような人は、それぞれの機能性、たとえば、フェラーリの場合は、その持っている性能を最大限に引き出し、高速道路をぶっ飛ばす(例:300kmで走行したりする)ために買う人は、ほとんどいないと思います。
ではなぜ購入するのでしょうか?
それは「持つこと自体がステータス」になり、フェラーリを持つことによる精神的な満足感のために買っているのではないでしょうか。
このように基本性能や品質がしっかりしていることを前提に、深い潜在ニーズを満たす価値を提供することが重要なのです。
うどん店の事例をもとに潜在ニーズを理解する
先ほどのオーストラリアのうどんの事例で言えば、女性客を呼ぼうとしているのであれば、女性が潜在的に求めているものに、フォーカスするのです。
女性の場合は、まず、美しく見られたいという潜在的な願望があります。
それを食の分野で満たそうとすると考えられるのは、美肌に良い食材、トマト、卵、うなぎ、納豆、胸肉、サバ等の食材を上手に、食べやすく、見た目もきれいに、麺とのバランスを考えて調理することなのです。
そして、お客さまに当店の料理は、美肌効果、アンチエージング、骨粗鬆予防、更年期対策、痴ほう症対策などの、さまざまな健康効果が得られる食材を採用していることをアピールすることも方法です。
最近の消費者でも美容とか健康に関する意識レベルの高い人、たとえば、医者さんなどは、このような情報をたくさん持っています。
薬とか、サプリメントでの美肌、健康を目指すのではなく、意識レベルの高いレストランであることを理解して貰うのです。
私は、以前から社内の食堂をオーガニック食堂にして、食は人々を健康にするための重要な手段として、実践してきました。
(※オーガニック食堂とは、主に有機栽培された食材や自然環境に配慮した食材を使用した料理を提供するレストランや食堂のことを指す)
以上のことより、お客さまのニーズを正確に理解すればするほど、ビジネスは大成功すると言えるのです。
製麺機を例とした潜在ニーズの例
当社のメインビジネスの製麺機の場合でも、製麺機を使うお客さまも潜在ニーズを正しく理解すればするほど、当社のビジネスは大成功するのです。
たとえば例として
- 基本価値:製麺機を購入するお客さまは、機械が故障せずに、だれでも簡単に美味しい麺が作れることとします。
- 期待価値:どこにも負けない美味しい麺が楽に作れて、美味しい麺の力で繁盛することとします。
- 浅い潜在価値の願望価値:どこにも負けない美味しい麺の力で、地域一番店になれることとします。
- 深い潜在価値の予想外価値:製麺機で自家製麺することにより、従業員のレベルが上がり続けることができる。
予想外価値は、期待もしていなかった価値であり、丸亀製麺の担当者の人たちでさえ、恐らく気づいていない価値です。
お客さまのニーズを「明確に、完全に、認識のずれなく」理解する方法
お客さまのニーズを確実に理解する方法として、過去、さまざまな手法が取られてきましたが、最初に顕在ニーズを理解して、次に潜在ニーズを理解する順序が大切です。
そのような中で、最初に大切なことは私たちが理解している「お客さまの顕在ニーズ」と、「お客さまが感じている実際の顕在ニーズ」との認識のズレを無くすることです。
そのためには、お客さまの顕在ニーズを明確にする。完全に認識のズレがないことを理解することです。
お客さまの顕在ニーズの一つ一つに関して「具体的に何がわかっている」「なぜそれが重要かわかっている」
次に「すべてのニーズがわかっている」「それらの優先順位がわかっている」ことです。
最後に、お客様がイメージしているニーズの絵と「まったく同じ絵を描ける」ことです。
これらの理解は、お客さまへの質問を丁寧に続けることによってはじめて可能になります。
飲食店におけるニーズとウォンツを正しく理解する
ニーズの理解の部分でよく間違えられるのは、ニーズとウォンツとの違いです。
ニーズが”目的”であるのに対し、ウォンツは”手段”を意味します。
先ほどの「〇〇が欲しい」がまさに「ウォンツ」であり、顧客の最初の要望は「ニーズ」ではなくこの「ウォンツ」である場合が多いです。
たとえば、ある男性が昼食を取ろうとしているとします。
その場合、昼食を取るときの「昼食を食べたい」という動機が「ウォンツ」となり、「美容のためにとか、体重を減らしたい、健康になりたい」などという昼食を取る目的が「ニーズ」となるのです。
※ウォンツ:昼食を取るときの「昼食を食べたい」という動機
※ニーズ:「美容のために」「体重を減らしたい」「健康になりたい」などという昼食を取る目的
顧客のニーズが「健康になりたい」にも関わらず、「昼食を取りたい=ニーズ」と捉えてしまうと、健康に良くない昼食など、ニーズと合わない料理を紹介してしまう恐れが考えられるでしょう。
これでは、顧客のニーズを満たすどころか、さらに理想からかけ離れてしまい、満足度は低下してしまうはずです。
一方、ニーズが「健康に良い」ことだとちゃんと掴めていれば、健康によい食事を提供している店の紹介等、顧客が望む商品を紹介することができます。
うどん店におけるニーズを正確に理解する
うどんの場合で言えば、うどんを「料理」としてみると
うどんの特徴は、「麺の食感」
次に、「出汁の味」など両者のバランス、「トッピングの良さ」「盛付の素晴らしさ」「提供方法」「店内サービス」「店内雰囲気」「店内の内装レベル」「清潔さ」等々。
お客さまごとにこれらのニーズは異なります。同時に、ニーズの優先順序も異なります。
あるお客さまは、商品のレベルよりもサービスレベルを優先されます。あるいは、あるお客さまは清潔さのレベルが非常に要求されます。
したがって、あなたが狙っているお客さまの真の顕在ニーズは何か、さらにその顕在ニーズの優先順序はどうか等を正確に理解することです。
潜在ニーズを見つける方法
顕在ニーズが理解出来れば、次は潜在ニーズを掘り下げることです。
これは、お客さまでも気づいていないので、質問では回答は得られないのです。
潜在ニーズを見つける方法は、お客さまの観察で、常にどんな料理をオーダーしているのかを見れば、お客さまの潜在ニーズが見えてきます。
注文する料理の裏に隠れている潜在ニーズは何か、何のためにその料理を注文しているのかを読み取るのです。
最後に
この記事では、お客さまのニーズを理解し、顧客満足度と売上を高め続けるための、解説をおこないました。
これから、私たちのビジネスを大成功させるためには、お客さまの潜在ニーズを探る旅に出ることをお勧めします。
当然、当社もお客さまの潜在ニーズを探る旅を永遠に続けたいと思います。
最後まで本記事をよんでくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。
本記事を通して、みなさまのお店が繁盛へとつながるように願っております。