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はじめに
私は、仕事柄動く乗り物には、非常に興味があり、オートバイ、自動車、飛行機等は詳しいのです。
特に、自動車は周りにたくさん走っていて、売れる自動車と売れない自動車の差は、常にマーケテイングの題材にもなっており、デザインの優劣、性能の優劣が販売を大きく左右するのです。
麺ビジネスも同じような現象が起きており、幾ら、美味しい料理を作っても、美味しそうな表現が出来ていなければ支持されないのです。
最近、ラーメンビジネスには、イタリアン、和食等、異分野のジャンルからの料理人が参入し、素晴らしい盛付と品質で成功している事例が多く見られます。
そこで、盛付で難しいのは単にデザイン的に素晴らしいだけでなく、素早く盛付が出来ること、コスト的に適切に成り立つこと、栄養的にバランスが取れ、ビジネスとしてのバランスが重要なのです。
更に、盛付はエンターテイメントです。
見ただけで、お客さまを感動させるような楽しさも必要なのです。
盛り付け次第で、美味しくも、まずくもできるって本当ですか?
あなたはどうように思いますか。
実はこれ、嘘のような本当の話なのです。
まず料理を食べる前に、あなたは料理を視覚的に見るでしょう。
料理が運ばれてきた様子を想像してみましょう。
器の縁に水滴や食材がついていたり、形が変形し崩れていたりしているだけで、おいしそうに見えなかったり、感じなかったりするでしょう。
逆に、器の縁を拭いて綺麗にしたり、崩れたものを元に戻したり、器に飛び散った汁を拭いたりするだけでも、その料理の見え方や感じ方は変化するのではないでしょうか。
そんな些細なことから盛付が始まります。
人間は視覚から入る情報が、料理の味の感じ方まで変えてしまっているのです。
全く同じ料理でも盛り付けだけで味が変わってしまうなんて、信じ難いかも知れませんが、それが私たち人間なのです。
人は視覚情報でいろいろなものを判断することが多く、見た目により味まで違って感じてしまっているのです。
そして、料理の美味しさとは目で見た視覚的要素に影響を受け、最終的に『脳』が判別していると言えます。
食べ物を味わう際に、五感の中でも視覚が果たす役割は特に大きいと言われます。
そのため、盛り付けによって食欲が増すこともあり、盛り付けまでが料理と言われています。
見た目を美しくすることで、味付けや材料が全く同じ料理を食べても、きれいに盛り付けをした方がおいしく感じることができるのです。
食事の魅力は,料理自体の美味しさのみではなく,料理の盛り付けや食器の選択などへの関心が伺えます。
そして、現代はSNSの評判なしでは集客ができない時代になっております。
写真や動画では舌で美味しいか、まずいか判断することはできません。
視覚のみで判断されてしまうのです。
その為、美的感覚を考慮した器を選択し、料理の見栄えにこだわり、盛り付けに関する知識や経験が重要です。
要するに、料理は器を選び、盛り付けをすることで完成し、盛り付けにより料理の見栄えが変化し、視覚によって美味しさに影響を及ぼします。
盛り付けはただ見た目を良くするだけではなく、味にも変化を与える効果があるということです。
盛り付けは料理を美味しく食べるためには欠かすことのできない過程作業と言えます。
盛り付けの目的(心構え)
盛り付けの目的は、同じ食材でも、より美味しく見せること、お客さまに驚きと感動を与えることです。
盛り付けで大切なことは、お客さまの期待以上、想定外
お客さまから、「こんなに美味しくて、きれいな調理方法があったとは驚いた!」と言われるのが、最高の賛美です。
お客さまの期待以上の驚き、感動を得るために、盛り付けのレベルを上げ続けることが必要とされています。
今が最高だと思わないで、今が出発、常に研究、進化を欠かさない
ビジネスの本質は、現状否定であり、現状に満足しないで、さらに上を目指すことです。
盛り付けも同様で、現状に満足しないで、常に上を目指しましょう。
素晴らしい盛り付けも、見慣れてしまうと当たり前になります。
盛り付けにおいても、飽きさせないことが大切であるのです。
新しい食材、新しい調理方法の情報収集、研究を絶やさない
常に世の中は進化していて、新しい食材、調理方法は次から次へと現れているのです。
お客さまも常に、新しい店舗で新しい食材、調理方法に遭遇しているのです。
同じことを何年、何十年と続けて、進化がないと、いつしかお客さまの方がプロになっています。
ここで盛り付けの3要素を紹介しましょう。
◯盛り付けのコンセプト(方向性)の明確化(顧客の明確化による)
◯食器の選定、食材の選定(栄養、色彩のバランス)
◯デザイン力(形にする力)と作業性の追求
今回のメルマガでは、上記の盛り付けの要素について詳しく説明していきます。
盛り付けの本質
盛り付けの本質とは、
①基本(スタンダードな料理の前提条件)が出来た上での、期待以上、感動、驚きであり、看板商品(ベストセラーであり、ロングセラー商品)を作り上げること。
②盛り付けとは、商品力アップのためのひとつの手段であり、商品の魅力度アップのための手法。
そして盛り付けの意味とは、お客様にとって味だけでなく、見た目等、五感を通して、料理をより楽しむ手段であり、エンターテイメントの要素が大きいです。
料理人にとって自分自身の技量を含めて、自分の持つすべての持っている能力の表現の場でもあります。
お店のオーナーにとって盛り付けの魅力により、お客様をたくさん集客することで、収益の源泉になります。
プロの商品には美味しさだけでなく、見た目のインパクトときれいさが必要です。
以前は、料理が美味しければ、飲食ビジネスは成功する時代がありましたが、今は料理が美味しいのは当たり前で、盛り付けのきれいさが飲食ビジネスの成功に大きく影響してくるのです。
コンセプトの明確化
コンセプトと盛り付けの方向性には一貫性が必須で、重要なポイントとなるのです。
コンセプトとは、お客さまの問題を解決する自店独自の方向性を明確にすることです。
有名な事例では、スターバックスの第三の場所があります。
一見すると、スターバックスはコーヒー等の飲料を販売し、利益を上げるビジネスのように見えますが、コーヒー等の飲料販売は手段であり、ビジネスの本質は第三の場所の提供で、お客さまの問題を解決しているのです。
従って、ラーメン店にとって、ラーメンは手段であり、本来のコンセプトはお客さまの抱えている問題を解決することなのです。
これは、非常に難しい問題ですが、これを明確にするほどビジネスは成功し、大和ラーメン学校でもこれには力を入れて授業を行なっています。
コンセプトとは、ビジネスの本質であり、ベースになるのは、あなた自身の価値観であり、使命です。
価値観で、自分がやりたいことを明確にして、次に使命で、多くの人たちに役立つことを考えます。
コンセプトは、それらを実際にビジネスに落とし込み、使命、価値観を何で表現するかという項目に当たります。
コンセプトを明確にすれば自動的にお客様(ターゲット)も明確になり、その人の問題解決のためにはどんな商品、盛り付けをすれば良いかが明確になってくるのです。
例えば、「健康志向の女性」をターゲットとする場合、野菜ばかりとか、肉ばかりの盛り付けではコンセプトからブレてしまいます。
このようにコンセプトと盛り付けの方向性には一貫性が必須で、重要なポイントとなるのです。
コンセプトを明確にするための要素
お客さまの明確化 (使命、価値観、コンセプト)
お客様が持っている価値観の差、ライフスタイルが重要な要素であり、これはすべて、最初に設定し価値観に紐付けられます。
一般的に飲食店における価値観での成功事例は、昔から有名なのはマクドナルドのQSCです。
Q Quality品質、商品力
S Serviceサービス
C Cleanliness清潔、衛生的
(注記)以上の価値観に於いても、順序が大切で、順序の違いでお客様が変わります。
参考) マクドナルドが全盛の時代はQSCだけで良かったのですが、現在の飲食ビジネスは更に複雑化し、VQSC+E(Effecincy)+V(Value)+E(Entertaiment)となっています。
Effecincyは、効率の追求で、これは店側の都合であり、お客様への貢献ではありません。
Valueは価値で、支払ったお金とお客様の満足感の関係で、価値が大きくなればなるほど、お客様の来店数が増えてきます。
過去の事例で、Valueが2倍になると、お客様の数は5倍になります。
Entertaimentは、楽しさの演出で、実演自家製麺、オープンキッチン等もこれに当たります。
盛り付けの綺麗さもエンターテイメントに繋がります。
季節の配慮(温度帯)
現在は、地球温暖化の影響で夏はより暑くなっています。
そして、ラーメンでは今までの熱いスープのラーメンから、徐々につけ麺、混ぜ麺等、あまり熱くないラーメンに移行しています。
従って、夏でもつけ麺とか、混ぜ麺を楽しむお客様が増えています。
反対に暑い夏の暑気払いに、唐辛子の効いた赤いスープの辛いラーメンも好まれています。
この様に、季節を配慮したメニュー作りも重要な要素です。
ランチ(軽い)、デイナー
過去、ラーメンとか麺類は軽い食事としてランチ需要が多かったのですが、これからはランチだけでなく、デイナーを狙ったビジネスも重要な要素になってきます。
大きなトレンドでは、人びとはだんだんと自宅で食事を作るのを省く様になっています。
デイナーも当然で、この市場規模は大きいのです。
イートイン、テークアウト、デリバリー、ECコマース
今までは、ラーメン店は、外食産業の一部で、イートインだけに頼るのが当たり前だったのですが、アフターコロナでは、イートインだけでなく、テークアウト、デリバリー、ECコマース等、あらゆる食のジャンルを狙ったビジネスが可能になり、ビジネスの幅が非常に広がります。
地球温暖化の影響による健康志向の高まり
過去、ビーガンとか、菜食主義は、一部の健康志向の人たちだけの志向だったのですが、SDGsから始まり、地球温暖化を防ぐための世界的な大きなムーブメントして、ビーガンが当たり前になってきています。
特にビーガン料理は、宗教、人種、食の課題を抱えた人たちの誰でも平等に食べることが出来るので、急速に広がっています。
ビーガンと共に、ハラルへの対応も重要な課題になって来ているのです。
食器選び
器の選定
コンセプトが明確になれば、コンセプトに合った器の選定が重要な要素ですが、盛付は本人のテクニックだけではなく、食器のデザイン、色、形状等といった。
食器自体の様々な要素に大きく影響を受けます。
従って、盛り付けの綺麗さの半分は、食器選びで決まると言っても過言ではありません。
ラーメン丼の場合、口が大きくて底まで広い丼もあれば、縁から底にかけて小さく窄まった形の丼もあります。
他には縁が大きく広がったものや、切り立った形などもあります。
商品を引き立てる最適な食器探し出すため、食器選びから手を抜かないことが非常に重要です。
一般的に、スープを張るタイプの盛付は、スープの表面の面積の大きい器は盛付が難しいです。
そして、表面積が大きいほど、スープが冷めやすくなります。
また、ぶっかけのような盛付は、浅く、広い器の方が、盛付が簡単です。
従って、用途によって、器の形状も全く変わってしまいます。
食器の余白
盛り付けを綺麗に見せるには、食器の余白が重要になってきます。
余白は絵画でいう額縁のようなもので、しっかりとした額縁がある事によって商品がより綺麗に見え、インパクトが増します。
余白が少ないと商品が窮屈になり、上品さがなくなり、綺麗な盛り付けも綺麗に見えなくなる場合があります。
食器の形状
ラーメンには温かいスープのラーメン、つけ麺、まぜ麺など様々な種類があります。
食器の形状によって、商品の見え方はもちろん、味わいにも影響してきます。
なので、何種類かの商品を提供する場合は、商品によって食器を変える必要があります。
温かいスープのラーメンに関してはできる限り温かい状態を保つことが重要です。
口が大きく、底も広いタイプはスープも麺もたくさん入れなければいけない形で、
空気に触れる表面積も大きいことから、スープがすぐに冷めてしまいます。
従って、一番良いのは縁から底にかけて小さく窄まった、切り立ち型の丼です。
深底でスープの表面積が狭いことによってスープが冷めにくい形となっています。
つけ麺の場合は、ほとんどの場合、麺の上にじかにトッピングが乗る場合が多いので、
丼の底の浅く、上辺の口の広いものを使います。
まぜ麺の場合は、麺、トッピング、タレを混ぜ合わせやすい丼の形状が必要になります。
丼の底が深く、口が小さすぎては、まぜ麺を綺麗に混ぜることは難しいため、
味にムラができ、一番美味しい状態で味わうことが出来なくなってしまいます。
なので、まぜ麺には混ぜやすさを考慮し、深すぎず、口が大きい形状の丼が最適です。
食器の柄や色
食器の中には無地や柄つきのものがありますが、柄が付いている場合、食器だけで見たときに綺麗に見えても、それ自体が主張してしまい、視覚的に盛り付けられている料理の邪魔になり、却って盛り付けが難しくなることがあります。
特に色の強い料理などを提供するときは引き立て役になってくれる白い食器、そしてなるべく明るい色のシンプルなものを使用する事をお勧めします。
盛り付けの実際の方法
色彩や配置によって料理を視覚的に演出する
まず、盛付のレベルを上げなければなりません。
その方法は、良い作品をたくさん見ることです。
そして、
a)見たものを正確に真似る(守:コピー)
b)自分なりの考えで作ってみる(破:改善、改良)
c)自分オリジナルなものを作り上げる(離:イノベーション)
守破離の活用が重要です。
プロの飲食店の盛付と家庭料理の盛付の違いは何か?
a)プロの盛付:見た目の綺麗さ、インパクト優先で、食べやすさにはこだわらない
b)家庭料理の盛付:食べやすさ優先
盛付をきれいに見せる要素はどの様なものがあるのか?
a)彩り:視覚的に重要
器・スープ・麺・トッピング、それぞれのコントラスト
例)「基本の5色」
赤・黄・緑・白・黒の5色を使用します。
栄養バランス、高さ、立体感のある盛付、白髪ねぎで最後の高さを出す、バランス、丼にトッピングを盛り付けすぎないこと。
料理のボリウムと器のサイズのバランスが重要です。
b)麺線をどのように見せるか
彩りを整えると見た目に美しいだけではなく、おいしさにもつながり、栄養バランスも整います。
食材の選定とカット方法がなぜ重要か?
カットの仕方によって、プロの料理か、素人の料理かの判断がされるからです。
盛り付け手本
お勧めする盛り付けをお見せしましょう。
さいごに
我々の身の回りのものは全て、誰かにデザインされた物で取り囲まれています。
街に出れば、車が走っていて、車は走るデザインです。
そのデザインの良し悪しで、売れたり、売れなかったりしています。
盛付は食べるデザインといえるでしょう。
そのデザインの良し悪しで、来て欲しいお客様が来たり、来なかったりします。
デザインこそ、物が売れるか売れないかを決める大きな真理的な要因です。
だから、我々はもっとデザインに注力しなければいけません。
麺専門店にとっては、盛り付けデザインは大変重要な要素です。
いかに、きれいに見えるか、美味しそうに見えるか、これは売れるか、売れないかを決める重要な分かれ道になってきます。
アイパッド、アイフォンが良く売れているのも、デザインです。
ビジネスの担当者は誰でも、デザイン力を高める必要があります。
その為には、常にデザインに意識する事が大切です。
自分の服装のデザインに気をつけること、これはデザイン力を身につける上で大変役に立ちます。
私の場合は、機械設計からスタートしたので、機械のデザインの良し悪しからスタートしましたが、機械のデザインも麺の盛り付けのデザインも全く共通性があります。
きれいに見せるには、色彩、形状、サイズ、バランス等、基本は同じです。
機械と麺の一番の違いは対象物が硬いか、柔らかいかの違いです。
麺専門店の成功に情熱があれば、デザインについても、常に興味を持って取り組む様になってきます。
盛付のきれいさをマスターするためにも、デザインの向上に取り組むことをぜひ、お勧めしたいと思っております。
当社の大和麺学校では盛り付け指導も実技で指導いたします。
生徒さんに実際に盛り付けをしていただき、問題点や改善策を指導し、実際に盛り付けの手本もお見せいたします。
見た目にこだわり、あなただけの最高の芸術作品を作ってみませんか。