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はじめに
これまでの記事では、麺ビジネスにおける、多店舗経営に移る時の問題点 #1/2をお話いたしました。
さらに麺ビジネスの問題点と成功する麺ビジネスの作り方についてお話していきます。
成功するビジネスモデルに必要な要素
どのようなビジネスモデルでも、麺ビジネスにおけるビジネス・モデルも半ば永遠に拡大再生産が出来るビジネスモデルを作ることが重要です。
拡大再生産とは、常に右肩上がりで発展を続けることが出来るビジネスモデルを構築することです。
一時は、非常に成功したが、次第にダメになっていくのではなく、半永久的に進化、発展するビジネスモデルを目指すのです。
私が知っている範囲で、これを成し遂げているのが、麺業界ではないのですが、ユニクロです。
最初、ユニクロも国内だけのビジネスだったのですが、現在では海外比率を非常に高めています。
日本で誕生したユニクロのビジネスモデルを海外でも通用するように、常に日々、改善、改良を繰り返しているのです。
これは、日本とか、韓国の自動車メーカーも同様で、国内市場だけであれば、とっくに限界が来ていたのです。
要するに、成功するビジネスモデルにおいて、大切な要素は、常にお客さまの数を増やし続けることなのです。
これを後押しする最も効果的な要素は、商品力の強化で、エンドレスに商品力、サービス力、衛生レベル、生産性等、麺ビジネスにおける経営に関する重要なファクターを高め続けることです。
これはユニクロのビジネスを見ていれば、非常に分かり易いと思います。
人についての準備、考え方
人について、最初に強調したいのは、まず、経営者のあなたがご自分の能力を伸ばし続けることです。
経営者として立派にやられているあなたの能力は、既に素晴らしいものをお持ちだと思いますし、社員の人たちと比較すると、場合によって、何倍もの能力を既にお持ちだと思います。
ここでは、あなたのその素晴らしい能力について、考えて頂きたいのは、「店舗数が少ない場合」と、「店舗数が多くなってきた」ときに、あなたに要求される能力が全く異なってくるということです。
例えば、店舗数が1~2店舗から数店舗以内の場合は、あなたが全員の先頭に立ち、現場で頑張っていれば、誰かが抜けても何とかなるのです。
しかし、その規模が何倍から、10倍程度に大きくなれば、あなた自身が陣頭指揮を執るわけにいかなくなります。
そして、通常の社員のレベルはあなたの情熱、スキルのせいぜい30%程度しかないのです。
そのような30%程度の社員を抱えて、成果を上げるためにやらなければいけないのは、あなたが経営者として、あなたが現場に入らなくも良い仕組みを作り上げることなのです。
これは現場の第一線で頑張っている経営者について、非常に難しいのですが、あなたが今までやり続けて成功した、成功方程式をマニュアル化して30%のレベルの社員でも成果が出るようにすることなのです。
経営者として、現場から離れて、このような仕組化に使わなければいけない時間が多くなるのです。
仕組化において重要なことは、あなたが1人で立派にやり遂げていた仕事を、あなたの能力の数分の1の人たちで出来るように細かく因数分解することなのです。
例えば、製麺作業において、難しいのは練作業で、練作業には最も熟練者を配置し、その他の工程は難易度に応じて、熟練度を見ながら、仕事配分を行ないます。
厨房作業も同じで、難易度の高い部分ほど、最初は熟練者を置きながら、全体の熟練度を上げるのと、最終的には全員が全行程をこなせるようにしていきます。
チェーン展開に入る場合に、経営者としてあなたの仕事は、あなたの能力の何分の1の従業員の人たちが、あなたと同じ成果を出すことが出来る仕組みを作り上げることなのです。
これは、私が過去出来ていなくて、何度も大きな失敗をやってきて、身に沁みているので、この大切さを強調出来るのです。
人が育つ以上に出店を加速させない
麺ビジネスの多店舗展開で失敗した事例のほとんどがこのパターンです。
人が育つ前に店舗展開を急いだ場合に、頻繁に起きているのは、例えば、最初の1店舗が非常に成功し、銀行に相談し、2店舗目を出すようになり、新しい店長を採用し、その店長を最初の店の店長にして、創業者は新しい店の店長になった場合に、必ず起きている現象が、最初の1号店の売上が落ちるのです。
今までは、創業者の人柄、実力で売上を保っていても、慣れない店長に交代して売り上げが急減することはよく起きているのです。
これは、新店を新しい店長に任した場合も同様で、創業者がジレンマに陥り、2店ともダメになった事例をいくつか知っています。
したがって、理想状態の店舗展開をする場合は、任せても売り上げが落ちない店長が育ってから、店舗展開をしなければいけないのです。
店舗展開を始めて、店舗数が少ないときは、人への先行投資が嵩み、創業者の手取りは少なくなり、決して、贅沢が出来ない状態になります。
ビジネスは、常に人材への先行投資は欠かせないと理解して下さい。
店舗展開のシステムを作る
私は、当社のような製麺機の製造販売のビジネスモデルと比べると、麺ビジネスのビジネスモデル作りは、簡単だと思います。
と、いうのは、一旦、大成功するビジネスモデルが出来れば、それを同じビジネスモデルが適用出来る商圏で横展開すれば、かなり速い速度で大きな売上を上げられる企業体を作ることが出来るのです。
このことは、当社のような非常に特殊な、横展開の難しいビジネスをやっている者から見れば、非常にうらやましいことなのです。
だから、何年かけても、成功する精緻で、独特なビジネスモデルを作り上げることはそれだけ価値があるのです。
成功するビジネスモデルが出来上がるまでは、脇目も振らずに、世界中のどこにもない生産性の高いビジネスモデルを作り上げることです。
この部分を深く理解するのは、マクドナルド創業者の伝記『成功はごみ箱の中に』に詳しく書いています。
特に、新店舗の厨房を作る時に、地面に厨房のレイアウトを書いて、実際にスタッフが動く動線を追って、レイアウト上の問題点を見つけていくという部分があります。
このように店内で起きるであろう、あらゆる問題、課題を徹底的に見つけ出すことが最初に重要です。
特に、最近は、お客さまが求める価値が大きく変化しようとしているので、お客さまの行動の観察は絶対です。
※参考レイアウト図面および、店内レイアウトについてお気軽にお問い合わせ下さい
品質、サービスレベルが落ちない仕組みを作り続ける
多店舗展開を始める時に、良く言われるのが、店舗間の商品品質、サービス品質、衛生品質、生産性のばらつきです。
同じチェーン店なのに、あの店は美味しいがこの店は美味しくない時がある等のクレームが良くあります。
特に食べログ点数は、品質が良い場合とそうでない場合のばらつきがあれば、必ず、悪い場合の点数になると思った方が良いのです。
このように品質のバラつきは、チェーン展開をする場合の大きなデメリットになります。
このような店舗間のバラつきを無くするのが、マネジメントの力なのです。
私が非常に感心するのは、ラーメン店のグローバル展開で大成功している博多一風堂です。
博多一風堂のビジネスモデルは、世界中で展開しているにも関わらず、多くの国を跨いでの展開なので、1国での店舗数は2店舗からほんの数店舗までなのです。
セブンイレブンのように、ドミナント戦略の反対なので、各国の品質レベルを常に一定にするために、大変な努力が必要なのです。
それにも関わらずに、世界中に飛び地で展開し、これだけの成果を上げ続けているマネッジメント・レベルは凄いと言えるのです。
ビジネスモデルの対応を常にチェック
4年前に突然、発生したコロナは、外食企業を筆頭に、多くのビジネスを死に至らしめたのです。
4年前の4月には、一挙に当社も国内売上が半減し、国際部の売上はほぼゼロになりました。
それまでの国際部の営業は、世界各地のお客さまを訪問して、ビジネスを行なっていたのですが、コロナになり、それが全く出来なくなり、オンラインイベントだけで、製麺機が売れる仕組みを作り上げました。
当初は、製麺機のような高額商品は、オンラインでは絶対に売れないと言われていたのですが、今では嘘のようになりました。
さらに、それから4年経ち、当社のビジネスモデルを大きく変更を続けているのです。
その為の対策の1つ目として、麺ビジネスに必要なことをすべてオンラインで学ぶことが出来るe-learningの改善、改良を続けているのです。
さらに2つ目の対策として、当社の営業員として働きながら、お客さまの製麺機のメンテナンス、販売、麺指導等を通じて、開店資金を貯めながら、同時に、麺専門店ビジネスに成功するノウハウ、スキルを、仕事を通じて学べる『大和麺専門店開業道場 第一期生募集』をスタートしました。
既に、当社に12年前に新卒で入社し、6年間当社で勤務した後、ラーメン店を開業して大成功し、今回その店舗を後継者に譲り、Amsterdamで新たにラーメン店を出店する事例があります。
以上は、当社の事例ですが、麺ビジネスにおいては、生産性向上が今後の重要なテーマになります。
生産性向上の対策としては、ファーストフード化によるテークアウトビジネスの強化、次のテーマは、アイドル時間を無くするカフェ化ですが、シンガポールでは、以前から、スターバックスの店内で麺類が提供されているのです。
香港では、以前からコンビニのセブンイレブン店内で、麺料理の調理が行われ、イートイン或いは、テークアウトが出来るのです。
マーケットの限界を理解する
同じビジネスモデルで成功を続けていくと、限られた市場では飽和状態になり、それ以上展開すると、店舗間の食い合いが生じます。
したがって、マーケットの限界を知ることは大切です。
更に、ビジネスモデルによっては、ライフサイクルによって、寿命のあるビジネスモデルが存在します。
今後20年間で、日本の人口が約2千万人減少すると言われており、だから、ライフサイクルで頂点に達する前に、次々と時代にあった新しいビジネスモデルの開発が重要になります。
既に出来上がって成功しているビジネスモデルをM&Aで入手すると時短になるように思えますが、マクドナルドとか、スターバックスのような大きく育つものは、簡単に入手出来るようなものではないと思います。
ここでも、常に消費者を見つめ続け、お客さまの問題解決に取り組むことが大切になってきます。
次の新しいビジネスモデルの準備を怠らない
最初の店舗のビジネスモデルが確立し、しっかり利益が出るようになってから2店舗以降の展開を行なうことです。
2店舗以降の多店舗展開に踏み切る場合は、必ず、拡大再生産が出来るビジネスモデルを作り上げてから、多店舗展開出来る人材を確保してから、チェーン展開を始めることです。
チェーン展開の成功 = 新しい最適なビジネスモデル発明
チェーン展開には、拡大再生産が出来るビジネスモデルの発明が欠かせないのです。
私は企業トップの最も重要な仕事としては、常に新しいビジネスモデルの発明ではないかと思います。
少し難しい話になってきましたが、アップルのビジネスモデルが外食の店舗展開に似ているので、例えてみます。
2001年にアップルから、i-phoneの原型に当たるi-podが発売され、それまでのウオークマン等の課題をすべて解決した画期的な音楽専用の小型コンピュータだったのです。
これがアップルの小型コンピューターの第一弾でした。
次にi-phoneが登場したのが2007年でしたが、これは電話機ではなく、電話もできる第二弾の小型の汎用コンピュータで、PCのように、MPU(マイクロプロセッサー)がコアで、その上にOSが載り、様々なアプリが走り、われわれの生活には欠かせない必需品になっているのです。
その後、i-padが2010年に発売され、i-phoneにはなかった大きなスクリーン付きの第三弾の小型コンピュータでした。
これらはすべて新しい、画期的なビジネスモデルで、私たちの生活を大きく変えたのです。
その意味で、いずれのビジネスモデルも今までになかった、新しいイノベーションを起こし、私たちに新しい価値を提供したのです。
その後、アップルのそれぞれのモデルは、改善改良を加えながら、未だに進化し続け、売れ続けているのです。
外食でのこのような画期的なビジネスモデルの最初の世界的な成功事例は、マクドナルドと言えます。
次の大きな成功はスターバックスで、いずれも私たちの習慣を変え、社会に大きな衝撃を与えたのです。
以上のように、外食の世界でも、お客さまの新しい課題を解決し、世の中を変えるような新しいビジネスモデルを作り上げることが、本当は、一番大切なことではないかと思います。