目次
はじめに
私は、40年以上にわたり、うどん、蕎麦、ラーメン業界の盛衰を見続けてきました。
この長い経験を通じて、それぞれの業界には大きな違いがあることがわかりました。
特にラーメン業界は、ここ40年の間で急成長を遂げ、日本発のグローバルフードとして世界中に広がりました。ところが、同じ日本の麺文化でありながら、蕎麦とうどんはラーメンほどの国際的な広がりを見せていません。
特に蕎麦は、グローバルフードとしての地位が最も遠い位置にあり、次にうどんが続いています。
それでも、うどんは少しずつグローバルフードの仲間入りしようとしています。
グローバルフードとして成功するかどうかの最大の要因は、その柔軟性にあります。
制約が少なく、自由度が高ければ高いほど、グローバル市場に受け入れられやすいのです。
要するに、ラーメンは「何でもあり」の世界であり、このフレキシブルさこそがラーメンを国際的な成功へと導いた鍵だと言えるのです。
今回は、ラーメン店の売上と利益をあげるのに、大きな影響を与えているラーメンの本質に迫り、それを活用して売上と利益を向上させるためのヒントをご紹介します
1.独自に進化した日本のラーメン
蕎麦は、日本の長い歴史と伝統に根ざした食文化であり、昔からのしきたりや慣習、常識に強く縛られた、非常にニッチな食文化です。
それに対して、日本のラーメンの歴史は比較的浅く、明治維新頃、約160年前に中国から渡来した食文化が起源です。
しかし、その後の日本のラーメンは、中国のラーメンとは異なる独自の進化を遂げ、多くのイノベーションを生み出してきました。
日本独自に起きたイノベーション
日本独自に起きたイノベーションの数々は、以下の通りです。
濃厚スープの発明
本場中国のラーメンには存在しない、とんこつラーメンのような濃厚で深い味わいのスープが日本で生まれました。製麺技術の進化
製麺機の発明により、少加水麺や中加水麺が登場しました。もともとは、中国の手延べ麺や刀削麺のような多加水麺とは異なる新しい麺が開発された。元だれの発明
スープに「元だれ」を加える技術により、ラーメンのバリエーションが大きく広がり、個性豊かな味を楽しめるようになる。つけ麺や混ぜ麺の登場
通常のスープラーメンにとどまらず、つけ麺や混ぜ麺といったスープが少ない、あるいは全くない新しいスタイルの麺の発明。多様な食文化への対応
ビーガンやハラルなど、現代の多様な食文化にも柔軟に対応できるのが日本のラーメンの強み
日本のラーメンは伝統に縛られず、自由な発想と、技術革新によって進化を続けてきた食文化であり、その柔軟性・多様性がグローバルフードとして成功を支えているのです。
2.多くの日本人を魅了し続けてきた日本のラーメンの進化の特徴
中国から伝わったラーメン文化は、日本で大きくイノベーションを起こし、独自の食文化へと進化しました。短期間で日本の「国民食」と呼ばれるほどの地位を築いたことは非常に不思議なのです。
そして日本で生まれたラーメンは、国内でさらに進化を続け、多くの日本人を魅了し続けているのです。
この進化こそが、今回のテーマである「ラーメン店が明日からできる売上と利益を確実に上げる3つの行動」に大きく関わっているのです。
ただし、ラーメン文化の進化の本質を、現役のラーメン店経営者の多くが、まだ十分に理解していないという現状があります。
ラーメンスープの濃厚化の進化
ラーメンスープは、時代とともに濃厚さが増し、味の深みとうま味がどんどん強くなっています。
久留米の有名店の事例(参考1)
30年前のスープでは現在の半分程度の骨しか使っていなかったといいます。それでも当時は十分濃厚でしたが、時代を経てさらに改良が重ねられ、年々進化させているとのことです。同じようなことを私は博多ラーメンとか、昔ながらの中華そばを通しても、体験しています。
白濁スープの誕生のキッカケ(参考2)
一説によれば、昭和12年(1937年)当時は日本を含め世界中のスープの基本は澄まし仕立てで、それをうっかり濁らせてしまったのが、久留米屋台の「三九」(現在は休業中)さんでした。基本的にスープというのは、炊き上がり次第、すぐに弱火にし、コトコト煮込みながら、澄んだ状態で旨味を出すというのが世界共通のスープのとり方でした。
「三九」さんは、買い物に出かけている間に火を弱くするのを忘れてしまい、煮詰まって真っ白になり、本来なら廃棄処分するところを、味付けして食べたらおいしかったのが白濁スープのルーツと言われているのです。
透明で濃厚なスープのブーム
以前の濃厚スープは白濁しているのが一般的でしたが、最近では透明でありながら濃厚なスープが注目されています。
淡麗系スープの登場
透明でありながら、濃厚という難易度が非常に高いスープがミシュランの星で取り上げられ、透明で、濃厚な淡麗系スープがブームになっているのです。スープ作りの難易度と傾向
透明で濃厚なスープを作るには、難易度からいえば、非常に難しく、そのようなスープが好まれるようになっています。当社のラーメン学校では、スープの作り方から元だれとの組み合わせ方まで、詳しくご指導いたします。
ラーメンのやみつきになる味
ラーメンの進化にあわせて、スープのうま味とコクはどんどん強くなり続け、麻薬のようなやみつきになる味が生まれ、多くの人が「忘れられない味」として仕立て上げられたのです。
やみつきになる理由
強いうま味とコクは、いわば、アルコール依存症のような一種の「ラーメン依存症」といっても良いような癖付けでもあるのです。繁盛店の秘密
そのような強い味のインパクトが、繁盛店を作り、何度でも飽きずに通うお客さまを創り出しているのです。
3.消費者の外食に対する大きな行動の変化
ここでは、外食の黎明期であった40年前と比較し、長いスパンでのわれわれ一般消費者が外食に対する接し方、求める要素の大きな変化について、以下に触れていきます。
40年前、外食は「非日常のレジャー」として位置付けられていました。当時、マクドナルドのハンバーガーやファミリーレストラン、うどん・蕎麦店、ラーメン店などが登場し、外食業界はまさに黎明期を迎えていました。しかし、その後の時代の変化とともに、外食産業には大きな転換期が訪れました。
外食業界の主役交代と競争の激化
外食市場には次々と新しい企業が参入し、競争は年々厳しくなりました。その過程で、消費者の嗜好やニーズも大きく変化していきました。お客さまの嗜好の変化を読み取り、生き残り競争が厳しくなるなか、時代の変化とともに、外食の主役の交代が続いていきました。
ファミリーレストランから居酒屋、そして価格競争の時代へ
外食の主役は、ファミリーレストランから居酒屋へ、さらにデフレ時代には低価格志向が主流となりました。マクドナルドの半額セールや牛丼チェーンの価格競争へコロナ禍での外食スタイルの変化
また、コロナになり、ファーストフードやテークアウト、デリバリーが強くなり、さらに、お客さまを楽しませ、ハッピーにさせる回転すし、焼き肉等がコロナの時代は強くなってきました。その間に外食で起きた大きな変化は、お客さまのある行動です。
スマホとSNSが外食業界に与えた変化
スマホの普及が高まることで外食業界にさまざまな変化が起きたのです。
グルメサイトの登場と飲食店のランキング化
最も大きな影響を与えたのが、グルメサイトの登場による飲食店のランキングです。どの店の人気が高いかいうことが、誰にでも即座にわかるようになり、今までの名店であっても、お客さまに評価されずにランキングを落とすと、人気がなくなってしまうのです。
特に、レビューや評価の影響では、スマホを使って、レストランの口コミや評価を瞬時に調べることができます。お客さまは信頼性の高い情報を元に飲食店を選ぶことができ、一方、飲食店側も顧客の声をリアルタイムで把握し、改善点を見つけることができます。
ミシュランガイドの影響
同じようなことでランクの高いレベルでは、ミシェランの星の付いた飲食店の登場でした。これは、ラーメン業界にとっても衝撃でした。SNSによる「インスタ映え」
次に起きた現象が、Instagramの登場によるインスタ映えのある盛付が評価されるようになり、盛付のきれいな料理をお客さまがInstagramに投稿することで、その店が有名になったりと、スマホとSNSの影響は外食にとって計り知れない影響力を持つようになったのです。