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はじめに
前回の記事で、美味しい麺生地作りの話が終わりましたが、うどん蕎麦、ラーメン等、一般的な麺の製法では、麺生地が完成すれば、薄く圧延する工程がその後に続きますが、圧延しないでも麺線にして、美味しい麺を作れる方法があるのをご存じですか。
実は、その代表的な麺が刀削麺で、麺生地をナイフで厚さ2~3mmに削いでいく麺で、ナイフで薄く削いだ麺線を勢いよく、沸騰している鍋に切り込んでいくと、鍋の中で、短時間で茹で上げられて、食感のシッカリした美味しい麺が出来上がるのです。
まさに職人技の世界で、最近では刀削麺専用の人型のロボットまで作られています。 それ以外の圧延しない麺は、小さい穴から押出方式の韓国冷麺とか、スパゲッテイです。 それぞれ、特徴のある食感を楽しめる麺になっています。
麺の本質とは、麺生地を成型し、美味しく、食べやすくすることです
うどんの原型は、小麦粉を水で捏ねて、団子にして茹でた食べた団子汁です。 それが洗練されて、食べやすくなり、最高に美味しくなり、うどんは小麦粉の芸術作品と言われるようになりました。
その食べやすく、美味しくした技術が麺の圧延技術で、薄く延ばし、食べやすいサイズにカットすることで、美味しさを引き出したのです。
圧延工程の本質とは、圧延の原理
引っ張るよりもつぶす方が伸びやすい
圧延とは、2本のロール隙間を通過させることで、薄くしながら塑性変形させる方法です。 塑性変形とは、元の形に戻らない変形で、変形しても、元の形に戻るのは弾性変形と言います。
素材を塑性変形によって延伸させる方法として、引っ張りによる方法、圧縮による方法があります。 圧縮の利点は、破断することなく非常に大きな延伸が得られる点です。
これは材料内部に働く力が主として圧縮となるため、材料に亀裂が発生しにくいからです。 圧延のもうひとつの利点は、材料を延伸させても板厚が薄くなるだけで、板幅はあまり変化しない点です。 引っ張りの場合は、板厚の減摩と板幅の縮みが同時に生じます。
大きく延伸しても板幅が変化しないことは、幅の広い麺生地の製造に役立ちます。 但し、手打ちうどんの場合の圧延は2本のロールの間での圧延ではなく、細い麺棒に巻かれた麺生地と平たい麺打ち台との間の圧縮により、圧延されるのです。 その原理は下記の通りです。

反対に真打とか、リッチメンのようなロールでの圧延は下記の様に、同じサイズの2本のロールの間で圧延が行われます。 従って、一気に圧延すると、麺生地の組織が破壊されます。

無理な圧延工程によって、麺生地の組織が破壊されたときに起きる現象
厚い生地をいきなり強い圧力で無理に伸ばすと、グルテンに過度の圧力がかかり、グルテン組織を傷め、最終的に破壊してしまう事に繋がります。
グルテン組織が破壊されてしまうと茹で時間が極端に長くなり、麺が切れやすくなり、歯切れや食感の悪いうどんになってしまいます。
例えば、キチンと作られたうどんであれば、8分程度の茹で時間であるのに対して、無理なミキシング、プレス、圧延等により、茹で時間は簡単に2倍になります。
適切な圧延工程によって起きる現象
生地の表面がなめらかで、つるりとした状態に仕上がります。 茹でた後の口当たりもよく、もちもちとしたのどごしの良い麺に仕上がります。歯を立ち込めた時に程よい弾力と強い粘りのあるうどんになります。
最適な圧延工程の見分け方
適切に圧延されているうどん生地は表面が滑らかですが、決して鏡面の様に表面が詰まり過ぎてないことが大切です。 麺生地の表面を圧延ロールにかけ過ぎると、表面が鏡面の様になり、出汁が乗りにくくなります。 カットした麺線の断面図を見ても美しいほぼ長方形の形を長く保つことができます。
逆にグルテン組織を破壊してしまったうどん生地は表面にただれやひび割れなどがあり、茹でたあとにも茹でふくらみが少なく、断面形状の四辺が凹んでいないなどの原因となります。
理想的な煉りによる美味しい麺の形状とは以下の通りです。 美味しいうどんを見分けるのは簡単で、食べてみる必要はありません。 茹でたうどんの麺を見るだけで簡単に分かり、見分け方は下記の通りです。

前歯で噛んでみる、噛み切れない粘りの強いうどんほど良いのです。
圧延した後の対処方法
圧延した後は、茹でる場合は、出来るだけ速やかに茹でます。 生麺保管の場合は、急速冷凍が一番望ましいです。
うどんの本質は、食べやすさと美味しさの追求
うどんの製法は、炊飯と比べるとかなり複雑な工程を踏まないと美味しくならないのです。 重要なことは、うどんの本質の理解で、小麦粉が生み出す芸術作品であり、餅状食感の食べ物というのが、うどんの本質ではなかろうかと思います。