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はじめに
こちらの記事では、持続的な飲食店経営に必要な考え方をお話しいたしました。
ビジネスでお客様を「元気」、「健康」、「幸せ」にすることと、ビジネスと戦略がどのようにつながっているのか解明していきましょう。
幸せになるための経営数値とビジネスの考え方
48年間麺ビジネスに取り組んできた私が、アフターコロナのこれからの時代において、ビジネス、
ひいては麺ビジネスの未来はどのように あらねばならないのかについて詳しく述べてみたいと思います。
私は49年間、麺ビジネスに取り組んできて、麺ビジネスは以前と比べるとだんだん儲かりにくくなり、儲からないのですが、
多くの人に支持されているビジネスで、市場は拡大を続けているので、新規参入者が非常に多く、
同時に廃業者も非常に多いビジネスです。
要するに、新陳代謝が非常に激しいビジネスとも言えるのです。
20年前くらいは、麺市場にはうどん蕎麦店が4万店、ラーメン店が同じくらいと言われ、
それぞれ、毎年新規に4千店ほど開業し、ほぼ同じ数だけ閉店している市場でした。
そして、この20年間で、麺市場のサイズは徐々に拡大しているのですが、店舗数が減少の一途で、
この業界も寡占化が始まっています。
現在ではうどん蕎麦店市場は約2万5千店、ラーメン店市場もほぼ同じ数だと言われているので、
1店舗当たりの売上は20年前の1.6倍以上になっています。
この数字の意味するところは、徐々に規模が大きくなり、生産性の高い店でなければ生き残れなくなってきている証拠なのです。
20年前には、うどん蕎麦店の1店舗当たりの平均月商が約250万円だったのが、現在では約500万円拡大しているのです。
これは、生産性の低い規模の小さい店舗が淘汰されていることを表しているのです。
ビジネスにはそのビジネスにあった最適規模がある
当社のような店舗用小型製麺機ビジネスでも、現在当社の社員数はほぼ80名で、まだ徐々に増加しています。
全国のお客さまに年中無休でメンテナンス・サービスをお届けするには、これでも最低ラインの規模と言えます。
特に、製麺機の開発もデジタル化が始まり、それに対応して、エレクトロニクスエンジニアが必要になり、
海外部門担当の外国人が増え、動画配信のためのウエブ関連のエンジニア、デザイナーが増え、
国内、海外の各拠点の担当者等々、どこを見ても足りない部門ばかりなのです。
特に当社のような製麺機ビジネスにおいては、国内市場が急激に人口減で縮小の一途をたどっているので、
グローバル化なくして、生き残っていくことは出来ないのが現状です。
当社は創業のころは、九州から製麺機の販売を始め、次は関西、次は関東とだんだん北上を繰り返して、国内においては全国区のメーカーとして地位を確立してきました。
もし、過去を振り返ってみて、全国区のメーカーを目指さずに、地元の香川県だけとか、四国だけを対象にては、永く生き残り続けることは難しいと思います。
背伸びして、全国区のメーカーになったので、今日まで生き残れていると考えています。
今後は、国内市場が縮小を続けていて、国内のお客さま方が、海外を目指しているので、一緒にグローバル化を果たさないといけないのです。
私は、このような考えに至ったのは、日本の自動車産業とイギリスの自動車産業を比較した結果です。
かつて、欧州は自動車産業の誕生の地であり、イギリスもロールスロイスを始めとして、有力な自動車メーカーがたくさんありました。
ところが、イギリスの自動車メーカーで、グローバル化に成功した自動車会社は1社もなく、ロールスロイスをはじめ、かつての有力メーカーはすべて他国のグローバルメーカーの傘下に入ってしまったのです。
ところが、世界の自動車メーカーの中では最後発くらいで、市場に参入した日本の自動車メーカーが世界トップ10に3社含まれています。
日本の自動車メーカーはいずれも、過去、相当背伸びして北米市場、欧州市場、アジア市場を開拓した結果なのです。
私は、人生における最高の戦略、ビジネスにおける最高の戦略は長く生き残ることだと信じています。
これからの麺ビジネスも長く生き残ることが非常に重要な戦略になると思います。
私は、コロナ前までは、ほとんど毎月、海外出張であちこちを見て回りました。
その中で、非常に感銘を受けたのは、スイス、ドイツ、フランス等の田舎にある美しい年代物家屋です。
何代も受け継がれ、世代が変わっても建て替えるのではなく、リフォームをし続けて、長く資産として活用し、かつ重厚で美しい建物なので、街の風景の一部として、その土地の観光資源になっているのです。
過去の伝統的は日本家屋はキチンと手入れすれば100年は十分使えるのですが、最近の日本の大手住宅メーカーが販売している家屋は、工場で大量生産されているので、デザインは優れていますが、耐久性には欠け、30~40年で立て替えている事例が多いのです。
これは国全体として考えても、ヨーロッパの国々と比べると、大変な資源の無駄遣いともいえ、SDGsが叫ばれている中、時代の流れに逆行しているのです。
同じことが言えるのが、うどん蕎麦店、ラーメン店で、ほとんどの店は、店主1代限りで、30~40年も営業すれば、非常に長い方です。
ほぼ7割の店舗が、開業して3年以内に閉店していることを考えると、非常に大きな資源の無駄遣いともいえるのです。
例えば、ある人がうどん店を開店したとします。
この人が、自分の代で非常に繁盛し、それを見ていた息子が継ぎ、更に事業を拡大し、更にそれを孫が継げば、大きな価値を社会に残したことになります。
社会資本が蓄積したことになるのです。
ところが、ほとんどの店は1代限りで終えると、その間に蓄積したノウハウ、技術、あらゆる資産がそこで途切れてしまうのです。
私は長く、麺ビジネスを見てきた人間として、この状態を絶ち、将来にわたり、繁盛し続ける店を作ることが私に残された使命であると思ったのです。
そして、長く生き残り続けるための条件として、私は成功している麺ビジネスを見て月商1千万円を超える店を作ることではないかと考えています。
1店舗月商1千万円を超えると、少なくとも毎月、200万円から300万円の利益がでて、再投資できる余力が出来るのです。
最近、国内、海外で非常に成功している麺ビジネスを見ても、月商1千万円が規模的には必要ラインだということが理解出来る。
これとは反対に、国内の麺市場で多く目にするのは、売上の少ない規模の店舗を多店舗展開している事例です。
数年前に、ドリームスタジオ名古屋で展示会イベントセミナーを行ったときに、参加者であるチェーン店の店長から質問がありました。
その店長は、人手が不足しているので、解決策を求めての質問でした。
何店舗展開しているのかを確認すると、売上が月商約200万円の店を5店舗展開しているとのことでした。
この規模ではほとんど利益が出ないので、私は、5店舗を1店舗にまとめて1店舗で売上1千万円の店を作る様に勧めました。
そうして、1店舗で月商1千万円の店をつくれば、店長も1人で済み、人手不足も一挙に解決し、利益もシッカリ出るようになります。
このように、1店舗で1千万円売れる店をつくれば、良いことづくめで、長く繁盛し、長く生き残るための再投資をし続けることが出来ます。
家業での麺ビジネスの場合、或いは人生を楽しむための趣味であれば、売上は重要な要素ではなく、ビジネスを楽しめるだけの売上があれば良いのです。
ところが、長く繁栄して、多くの人たちを幸せにするためには、最低の必要な規模があると思います。
私は麺学校で教えているのは人を雇い、ビジネスとして麺ビジネスをやるのであれば、1店の営業でも最低月商500万円、多店舗化を目指し、チェーン化するのであれば、1千万円以上が必要だと教えています。
私が以上のような店舗規模の大切さに気付いたのは、アメリカの繁盛店を見て回った結果です。
アメリカでは、ハンバーガービジネスはマクドナルド等の大手の寡占化が終わっていると思っていました。
ところが、西海岸ではIN-OUT BURGERが大成功し、東海岸ではSHAKE SHACKがNY発で、新参者だが、世界展開を始め、このような中堅だけではなく、各地には、その土地で繁盛し続けているハンバーガービジネスだけでなく、ピザとか、さまざまなレストランが強く生き残っているのです。
そして、地方で繁盛している特徴あるレストランは、いずれも時代を受け継いで長く生き残り続け、規模のそれなりに大きなレストランが多いのです。
私は、自分自身のビジネスを通して、そして、多くのビジネスを通じて、経験させられたには、最適な規模の追求だということです。
規模による儲けの出るビジネスの種類
マネッジメントの世界では、ボストン・コンサルテイングが提唱しているアドバンテージ・マトリクスがビジネスの説明でよく使われています。
私は、アドバンテージ・マトリクスを知ったのは、10年前の2013年で、最初は企業規模の小さいビジネスが大企業に勝つための戦略だと誤解していました。
アドバンテージ・マトリクスを完全に理解することで、長く繫栄を続け、生き残ることが出来るビジネスを作り上げるのに、非常に役立つということを見つけたのです。
アドバンテージ・マトリクスの新しい概念を理解させてくれたのが、経営者・従業員・株主のみんなで豊かになる 「三位一体の経営」 中神康議(なかがみやすのり)著だった。
それでは、分かり易いので、私の最初の誤解から説明していきます。
麺類店の革命!~ 小(個店)が大(チェーン店)に勝つ経営
麺専門店ビジネスの特徴は、下記のアドバンテージ・マトリクスの分散型ビジネスに当てはまります。
元々、うどん店、蕎麦店、ラーメン店の様な麺ビジネスは、小が大より強いビジネスで、日本には大手チェーン店がほとんどなかったのです。
ところが、うどんのチェーン店化では、丸亀製麺が成功し、市場規模の約1割近くを占めるようになっているのです
競争変数の数の差が、ビジネスの種類を分け、ラーメン・ビジネスの場合の競争変数は下記の通りです。
同じ麺ビジネスでも、ラーメンが一番、競争変数が多いので、業界大手と言える、うどんの丸亀製麺のようなチェーン店は存在しないのです。
①麺の種類
- 材料
- 副資材
- 加水率
- 製法
- 麺の形状
- 麺サイズ
②スープの種類 材料の豊富さ
- 濃淡
- 炊き方
- ブレンド
③元ダレ 調味料の種類
- 副材料
- 温度
- 保存期間
④香味油 油の種類
- 副材料
- 温度
④トッピング 材料
- 調理方法
⑤調理方法 盛付方法
- 温度帯
- 器
ビジネスの種類は下記の4つだけ
※アドバンテージ・マトリクス(ボストン・コンサルテイング・グループ)より
「競争上の競争要因(戦略変数)が多いか少ないか」「ある事業の中で優位性を構築する可能性が大きいか小さいか」という2つの軸で、世の中の業界を4つのタイプに分類する。
それぞれのタイプによって事業の経済性が異なり、成功の可能性も異なる。
競争要因が少ないということは、競争手段が少ないことを意味し、勝ち負けが単純に決まるということである。
優位性構築の可能性が大きいということは、その競争要因によって他社に対して明らかな競争優位を獲得できることを意味する。
特化型事業、規模型事業、分散型事業、手詰まり型事業の4つのタイプに分かれ、それぞれのタイプで事業の経済性、すなわち売り上げ規模と収益率の相関関係が異なる。
属する業界がどのタイプに位置づけられるかを認識することにより、とるべき戦略の基本的方向性の示唆が得られる。
分散型事業 (小規模型ビジネス) 多数乱戦型の経済
競争要因が多く、優位性の構築が難しい事業です。
この事業タイプでは、事業が小規模な段階では旨みがありますが、大規模になると収益性の維持が難しくなります。
規模を大きくすると、儲からないのですが、反対に大手が参入してこないので、スタートアップには適したビジネス形態です。
この業界はスケールが効かず、差別化出来るかどうかで、勝負が決まるので、大資本には難しく、小資本に儲けるチャンスがあります。
競争要因が多数存在するが、圧倒的な優位性構築が困難で事実上大企業のいない事業です。
小規模な段階では高い収益性を得ることができるが、事業規模を拡大すると収益性が低下します。
競争要因としては、品質、価格、店舗の雰囲気、立地条件などあるが、店舗経営者の資質が収益性を左右する場合が多く、収益性を高める要因が多数ありますが、圧倒的な優位性は構築できないので、大企業が存在しないのです。
事実上大企業がいないのがこのタイプなので、規模の経済は働かず、小規模なうちは儲かっても、大きくなると収益性を保てなくなります。
これは、競争要因が多く、企業全体として優位性を構築することができないためです。
規模が小さくても、顧客ニーズに応えれば、収益性を高める事が出来、お客さまのニーズは単一ではないので、スケール勝負が出来ず、大規模になり難いのです。
上位企業のシェアが低いのが特徴で、お客様は、自分の嗜好にこだわりを持つので、特定のお客様の好みを明らかにし、そのこだわりに応える事が出来れば、収益性を高める事が出来ます。
(例)アパレル業界、麺専門店店業界で、お手軽ではなく、上質志向、ラーメン業界
(参考)ハンバーガー業界は、顧客のハンバーガーに対する好みが分散していない為、マックが75%のシェアを握っています。
お客様は、ハンバーガーにそれほど、こだわりを持っていないのです。
マックは多くのお客様を満足させるだけのハンバーガーを提供していて、お客様の4分の3はマックを選択し、お客様の9割は、マック、モス、ロッテのどれかを選ぶのです。
ハンバーガー業界の競争は、製品=ハンバーガーの違いではなく、価格の違い、チャネル(立地)の違い、プロモーション(広告宣伝)の違いが競争の原点です。
企業規模や施策のスケールで、勝負が決まる業界は、牛丼業界も同様で、大手3社(すき家、吉野家、松屋)の3社のシェアが93%です。
特化型事業 (大中小混戦型ビジネス)
競争要因が多いものの、特定の分野で地位を築き上げることで、優位性の構築が可能な事業です。
この業界はスケールも効き、差別化で勝負することもできるのです。
大資本でも、小資本でも、儲けるチャンスがあるので、最初は分散型事業で業界に参入しても、規模拡大とともに、特化型事業に移行することがお勧めです。
競争要因が多いが、特定の分野でユニークな地位を築くことで競争優位が保て、収益性が確保できる事業です。
通常、市場がニッチなので大企業にとっては魅力がなく、収益性を高める要因が多数あり、ユニークさで収益性が決まります。
規模(シェア)の大小が影響を及ぼす場合でも、特定分野で異なる戦略を採ることで、優位性を築くことができる事業です。
主要な競争要因は2~5個程度で、医薬品業界はこのタイプです。
(例)特殊専門誌業界、計測機器業界、製薬業界、ヨーロッパの自動車業界、セルフうどん店業界
手づまり型事業
優位性構築が難しい事業でで、規模効果が限界に達した事業によく見られる形です。
この事業タイプは、新たな優位性を構築して、特化型事業になることが求められます。
この業界は、スケールが効かず、差別化でも勝負出来ないので、誰も儲からないのです。
(例)鉄鋼業界
規模型事業 (大企業型)
規模を大きくすることで、優位性を構築できる、いわゆる規模の経済が働く事業です。
規模型事業ではシェア拡大によって大きな利益をもたらすことができます。
スケールが効く、だから大資本が儲かり易く、寡占化されている業界がこれに当たります。
規模(シェア)の大小しか競争要因が無く、規模の経済が働く事業で、先ほどのハンバーガー業界、
牛丼業界がこれに当たります。
シェアの拡大が高収益に直結し、自動車業界もこのタイプです。
(例)自動車業界、コンピューター業界、素材業界、コンビニ業界、殆どのお手軽方向のビジネス
牛丼業界、ハンバーガー業界