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はじめに
読者の皆さま、新しい年がスタートし、お陰様で、当社も今年10月24日でちょうど半世紀、創業50周年を迎えます。
これも当社の製品、サービスを長く愛用し続けて頂いているお客さまのお陰であり、更に、最近では国内だけではなく、多くの海外のお客さま方のお陰であることに、改めて、深くお礼を申し上げます。
更には、常に多くの問題を抱えながらも、長く当社で懸命に、国内、海外で、働き続けてくれている多くのスタッフたちの尽力には頭が下がります。
当社は、実にたくさんの失敗をしながらも50周年を迎えることが出来ました。
更に、多くのお客さまのビジネスに貢献し、関係する人たちを幸せにするために、さまざまな会社の在り方を常に模索しているうちに見つけた面白い書籍について、今後、少しの間、皆さんと一緒に有益な情報の共有を致したいと思います。
過ぎ去った日々を振り返りながら、過ぎ去った50年とこれから迎える新たな50年に向けて、過去の50年間でのうまくいったことの要因、うまくいかなかったことの要因を振り返ると、この書籍が触れている5つの原則に沿った場合はうまくいき、5つの原則に沿わずに、予測を立てて実行したことは、ほとんどうまくいっていないことが分かりました。
麺ビジネスの世界でも、予測出来なかったコロナのような突発的な大きな社会変化により、ラーメン店の閉店がニュースになったり、必ずしも麺ビジネスは成功するビジネスとは言えなくなって来ています。
特に、これから先の不透明なビジネス環境を強く生き残るための手段として、今回は読者の皆さまと一緒に学びを深めていきます。
当社もこれから迎える、不確実性が増している先の読めない、不透明な新しい50年に向けての戦略策定の上で、必要で有効な方法であり、当社のような製麺機製造業だけでなく、あらゆる業種のビジネス、麺ビジネスにとっても、必要な思考法であると思います。
不透明なビジネスの現実の中で、問題を解決するエフェクチュエーション
この書籍を読み込んでいきながら、感じたのは、私は50年間の歴史の中で、
うまくいった戦略は、この理論を知らずに実践したという事実です。
書籍のタイトルは、「Effectuation エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」」で、世界的経営学者が発見した、戦略や計画よりも重要な思考法を習得出来る日本初の入門書!です。
エフェクチュエーションは、サラス・サラスバシー教授(ヴァージニア大学ダーデンスクール)が、カーネギーメロン大学の博士課程在学中に、ノーベル経済学賞受賞者のハーバート・サイモン教授の指導のもと実施した研究から発見されました。
2001年に、経営学分野で最高峰の学術雑誌『アカデミー・オブ・マネジメントレビュー』上で最初の論文が発表されて以来、エフェクチュエーションは、アントレプレナーシップや価値創造に関わる分野を中心に、幅広い領域に大きなインパクトを与えてきました。
従って、経営学の概念としても、比較的に新しい概念で、今までにそれほど広まっていないのです。
エフェクチュエーションの大きな特徴は、従来の経営学が重視してきた「予測」ではなく、「コントロール」によって、不確実性に対処する思考様式であることです。
従って、過去の経営学の概念と大きく異なる分野であり、非常に実践的な概念であり、非常に分かり易く、誰でも実践し易い概念でもあるのです。
現在、われわれが立ち向かっているビジネスの世界のほとんどの課題は、予測不可能な時代になっています。
それの最も端的な事例は、コダックの倒産です。
コダックはカメラ・フィルムで大成功した世界トップの企業でした。
カメラ・フィルムの時代から、デジタル・カメラの時代になると、それまでの時代の変化の様式が大きく異なってきたのです。
フィルムの時代はアナログの時代であり、デジタル・カメラの時代はデジタルの時代になり、世の中の変化の速度、変化の仕方が全く異なってきました。
アナログの時代は、リニア(直線的)に変化する時代であったのです。
例えば、今年の売上は幾らだったから、来年はこのくらいになるということがほぼ予測出来た時代です。
或いは、毎年の売上予算を組む場合でも、来年は今年の5%増しとか、10%増しとか、そのような予測が可能な時代であったのです。
ところが、デジタルの時代になると最初のスピードは速くないのですが、途中から指数関数的な急激なカーブを描き、想像を超える速度で成長するのです。
まさに、デジカメの成長、或いは、スマホの成長等と同じで、スマホでは日本メーカーはどこも生き残りが出来なかったのです。
以上のようにデジタル化の時代、予測はほとんど外れてしまうのです。
普通に考えると、麺ビジネスはデジタル化に無縁の様に思われるかもしれませんが、食べログとか、グーグルマップは全てデジタル化の申し子で、既にわれわれはデジタルの世界に囲まれて生活、ビジネスを行なっています。
従って、既にわれわれの世界は、デジタル化により、指数関数的な急激な変化に晒されているのです。
以前のアナログの世界であれば、エフェクチュエーションの概念が必要ではなかったのですが、デジタル化と共に、非常に重要な概念になり、これからますます重要度が増すのです。
予測困難な場面で活用できる「エフェクチュエーション」5つの原則
本書のサブタイトルに書かれているように、5つの原則から成り立っている思考法です。
エフェクチュエーションを一言で説明すると、「熟達した起業家に対する意思決定実験から発見された、高い不確実性に対して、予測ではなくコントロールによって対処する思考様式」です。
ビジネスの現場で不確実性の高い取り組みを進めるときは、まず目標を設定してから、それを達成していくために最適な計画を立て、その計画通りに実行していく「コーゼーション(因果論)」の方法を取ることが一般的です。
しかし、これまで存在しなかった事業や市場を新たに創造する場合、最初から正確な目標や計画を立てることは容易ではありません。
そのような不確実性の高い状況において効果を発揮するのが、エフェクチュエーションです。
重要なのは、コーゼーションとエフェクチュエーションのどちらも「合理的な考え方」であること。
コーゼーションは「目的に対する最適な手段の合理性」であるのに対して、エフェクチュエーションは「目的がない、あるいは目的に対する最適な手段がまったく予測できない状態でのプロセスの合理性」といえます。
(参考)コーゼーション(因果論)は、予測に基づいて機会を特定したうえで、成功する見込みの高いプロジェクトに効率的に経営資源を配分することが可能な、合理的なアプローチです。
たとえば、新製品開発プロセスにおける複数のステージを区別し、「ゲート」と呼ばれるチェックポイントで各ステージの品質を評価することで、質の悪いプロジェクトを早い段階で排除しつつ、貴重な資源を有効なプロジェクトに集中する「ステージゲート・システム※5」や、潜在顧客や競合の状態をさまざまなデータやマーケティング・リサーチを用いて理解しながら、適切なセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STPとも呼ばれます)を設計するマーケティング戦略構築の中核的なステップ※6も、コーゼーションの考え方を前提としているといえるでしょう。
※5 Cooper (1990).
※6 Kotler & Keller (2016).
ただし、それが有効であるのは、企業にとって当初から目的が明確であり、また環境が分析に基づいて予測可能な場合に限られることには注意が必要です。
一方で、従来存在しなかった事業や市場が新たに創造されるような場合には、着手する時点で目的と機会が明確に見えているとは限りません。
また限られた資源しか持たない起業家にとっては、仮に明確な目的が見えていても、資源を調達できない限り機会は実現できないことになります。
つまり、環境の不確実性が高い場合や活用できる資源に制約がある場合に、コーゼーションのアプローチではすぐに行き詰ってしまうのです。
いまだ存在しない市場のように、コーゼーションではアプローチできない高い不確実性に対して、熟達した起業家が行なっていた意思決定の論理は、目的ではなく1組の手段を用いて、それを活用して生み出すことのできる効果(effect)を重視するという特徴があったので、
「エフェクチュエーション(effectuation:実効理論)」と名付けられたのです。
コーゼーションとエフェクチュエーションの違いを簡単に言えば、
・目標から考えるのがコーゼーションで、
・走りながら考えるのが、エフェクチュエーション
というプロセスの違いです。
尚、コーゼーションとエフェクチュエーションには、どちらに優劣があるわけではなく、この2つは補完関係にあります。
エフェクチュエーションには、以下のような5つの思考様式があり、少し変わった名前が付けられています。
- 「手中の鳥の原則」
- 「許容可能な損失の原則」
- 「クレイジーキルトの原則」
- 「レモネードの原則」
- 「飛行中のパイロットの原則」
という、5つの特徴的なヒューリスティクス(経験則)が存在します。
下記(上記書籍から抜粋)はエフェクチュエーションのプロセスで、上記1~5の原則が順序と共に、宛てはめられています。
- 「手中の鳥の原則」は、何か通常と異なる事象が発生した場合に、左端の手段を評価するの部分です。
- 「許容可能な損失の原則」は、損失の許容可能性の部分で、何が出来るかに当たります。
- 「クレイジーキルトの原則」は既知の新たに出会う人々との相互作用に当たります。
- 「レモネードの原則」はパートナーシップの構築で、パートナーのコミットメントの獲得に当たります。
- 「飛行中のパイロットの原則」は、以上の4つの概念を組合せ、次のステージ、新たな企業、新たな製品、新たな市場を見つけるゴールに到達するサイクルの最終段階です。
「手中の鳥の原則」の概念
今回は、1番目の「手中の鳥の原則」について、深く考察を加えます。
「手中の鳥の原則」とは文字通り、今、自分が持っている資源の活用をして問題を解決することです。
昨年年末の東京の麺学校で、若い生徒さんが参加していましたが、自分自身の資源について、何もないと言っていましたが、その生徒さんにとって、若さが資源であると理解していなかったのです。
反対に私の場合は、年相応の経験も資源のうちに入るのです。
われわれは、往々にして、自分自身の足りないものは非常に良く分かっているのです。
例えば、資金が足りないとか、規模が小さいとか、年数が浅いとか、ネガテイブ発想になりがちです。
ところが、「手中の鳥の原則」の概念とは、自分の持っていないものではなく、自分の持っている資源に、徹底的にフォーカスするのです。
人は誰でもネガテイブな側面もあれば、価値あるものを持っているのです。
先ほど、コダックの事例を挙げましたが、同じフィルム業界にあって、コダックと同じようにデジタル・カメラの急成長の洗礼を受け、市場の9割消滅したフィルム業界から、今までフィルムで培ってきた基盤技術をてこに、化粧品業界、医療業界、医薬品業界、電子材料、高機能材料、ビジネスマシン、イメージング業界と新しい分野の開拓を進めて、フィルム会社の時代とは、全く異なった、新しいイノベーテイブな会社に生まれ変わったのです。
これは、「私は誰で、何を知っていて、誰とつながっていて、どんな余剰資源があるのか」といった、自分が既に保有している手段を用いて「何ができるか」を考える意思決定のことです。
目標から逆算するのとは、まったく逆のアプローチです。
要するに、何が出来ないかではなく、自分が持っている資源で何が出来るかという、難しい局面において、細い針の穴に糸を通すような難しい、強い精神力を必要とする思考なのです。
従って、どんなことがあっても諦めないという強い忍耐力を伴なう作業でもあるのです。
私も当社の過去の歴史を振り返ると、社員全員が反対した年中無休365日のメンテナンスとか、うどん学校の開校とか、特にラーメン学校の開校がこれに当たります。
或いは、無理をして背伸びして、海外展開を始めたこともこれに当たると思います。
最近では、コロナになった後、モノ作りカンパニーとして、茹で卵自動殻剥き機「ゴールデンエッグ」の開発等もこれに相当します。
或いは、コロナになった後、メデイアカンパニーとして、オンラインイベントを活用し、オンラインでの製麺機の販売に成功したことなども、これに相当します。
以上のように、「手中の鳥の原則」は、自分の持っているもの全てを総点検し、徹底的に有効活用して、不可能を可能にする思考法ではないかと思います。
2番目の「許容可能な損失の原則」は来週に詳しく触れていきたいと思います。
麺ビジネスに当てはめると
以前に紹介しましたが、ある会社の社是に“Let’s Enjoy the difficulties”というのがあります。
「困難を楽しもう!」ということですが、困難だけでなく、全てを楽しむことの大切さに気付かされます。
以上より、エフェクチュエーションの本質は、起きることは全て起きるべくして起きたことであり、起きたことは必然で、必要があって起きたことであり、
この起きた事象を最大限有効活用して、同時に自分が持っている資源を最大限有効活用し、状態を自店、自社にとって、有利な状態に持ち込む行動の全てです。
エフェクチュエーションは、単なる思考法ではなく、行動原理であり、行動を行なう考え方です。
これを現在の麺ビジネスに当てはめると、コロナの後、消費者の価値観、ライフスタイルの変化は、非常に大きく、特に衛生、健康に対する気遣いは以前とは比較にならないのです。
これを外で起きている事象として捉えると、この起きた事象に対して、自分の持っているどの資源をどの様に有効活用し、ビジネスを大きく変化させることなのです。
武道の世界で言えば、相手の持っている力を活用して、反対に相手を攻め上げることなのです。
当社は50年間、麺ビジネスの業界で生きて来て、自信を持って言えるのは、いつの時代にあっても、麺の美味しさと健康は、絶対に切っても切れない重要な要素です。
どこにも負けない、美味しい麺作りとか、無化調、無添加のスープ作りとか、皆さまの繁栄にお役に立てられる資源をたくさん持っております。
ぜひ、入手しやすい当社の資源を「手中の鳥」として活用し、あなたのビジネスを大成功させて下さい。
これからも永く成功する麺ビジネス作りに必要なさまざまな情報を提供し続けていきます。
皆さん、今年1年、よろしくお願いします。