この記事は2024年4月22日のロッキー藤井の情熱メルマガで配信された内容を一部修正して公開しています。
失敗成功事例から学ぶ、ラーメン店、うどん店、そば店の最適な立地の実践ポイント

目次

コンセプトを起点とした最適な立地戦略#1の続きです

①立地において絶対に妥協しなかった、都内のうどん店「讃岐饂飩 元喜」さん

元喜のご主人、岩崎さんは当社のうどん学校を卒業した後、2006年に文京区千石で開店したのですが、私は岩崎さんと物件調査に何軒も一緒に見に行ったので、岩崎さんの物件については特別に思い入れがあるのです。

岩崎さんも最初不動産屋に情報の提供を求め、合計400件程度の物件情報を貰ったそうです。そして400件を物件情報で判断し残った100件をくまなく見て回ったそうです。

その100件の中から最終的に4件に絞り、4件について徹底的に長所、短所の比較をして現在の物件を決めたのです。したがって、現在の物件を得るために、一切の妥協をせずに、多くの時間とエネルギーを割いたのです。

まさに命懸けで物件を決めた貴重な事例で、営業状態も卒業生の中で模範生だと言えます。

②さまざまな失敗事例の当社のスタッフたちからの報告です

A.駅前ロータリーに面した細いビルで開店

駅前によくある古い細いビルに1階・2階で開業されました。1階に厨房と客席、2階は客席のみ。細いビルで、レイアウトが難しく、席数をおおくとろうとして、通路幅とても間隔が狭く、大柄な方だとかなり窮屈な通路幅になってしまいました。

2階も特別広いわけでなく、壁と窓に向かってカウンター席があるのみで通路も人がひとりやっと通れる程度の広さでした。こちらは麺学校の卒業生さんではなく、他で修行をされた方で、当社に開業相談に来られた時は、すでにこの物件を契約されており、後戻りができない状態でした。

隣接する飲食店は立ち食いの店や、もっと広い店内の店ばかりで入りやすいため、こちらお店は、苦戦されています。駅前 = 好立地と考えられ、決められてしまった物件でした。

物件契約前に大和と接点があれば全力で止めていた物件だったと思います。経営講義やイベントのセミナーで物件選びの大切さについてお話されていますし、我々も商圏分析の結果や、それに基づくご相談の際には必ずお話しているのですが、それに接することが出来ない方もいるのだと改めて感じました。そして物件選びの大切さを再認識しました。(当社、スタッフ談)

Aをまとめると、

  • 立地: 駅前にある古い細いビルの1階・2階で開店。
  • 問題点:
    • 店舗レイアウトが難しく、通路幅が狭く、大柄な方は通りづらい。
    • 2階も広くなく、カウンター席と狭い通路だけ。
    • 近隣には広い店舗が多く、競争が激しい。
    • 物件契約前に当社に相談できていれば、強く止めていた物件だった。
  • 結果: 店主は苦戦している。

B.駐車場の不足で近隣住民とトラブル

当社のユーザーではなく、自家製麺体験教室に来られた元麺店店主のご夫婦

関東のローカル都市でラーメン店を開業し、それなりに流行って、繁盛したそうですが、駐車場が4~5台しか止められず、席数はそれよりも多かった為、来店される方が公道に迷惑駐車するようになってしまい、近隣住人とトラブルになり、通報され、退店を余儀なくされたそうです。(当社スタッフ談)

Bをまとめると

  • 立地: 関東のローカル都市でラーメン店を開業。
  • 問題点:
    • 駐車場が4~5台分しかなく、席数に対して駐車場が不足。
    • 客が公道に迷惑駐車するようになり、近隣住民とトラブルに。
  • 結果: 近隣から通報され、退店を余儀なくされた。

C.駅近の2階店舗で8か月で閉店

オープン後、8か月で閉店した店舗

当社で何度か商圏分析をさせて頂いていましたが、審査に落ちることが続き、焦りが出たのか、ご契約された物件は当社に相談なく、商圏分析もされずに駅近くのビルの2階に決めてしまっていました。

2階は良くないとお話しても、「もう契約が済んでしまったので」と、ご開業されましたが、オープンして8か月後に閉店しました。立地も良く、人通りも良いとおっしゃっていましたが、通勤通学時以外はあまり人通りの無い駅で夜は安価な居酒屋が人気のようでした。

お店は高めの価格設定で、「その地域に同じような店が無いので、2階でもきっと成功する」とおっしゃっていましたが、ニーズが無かったのだと思います。2階というデメリット以外にも、地域性も合っていませんでした。特に商圏分析の重要性を感じました。(当社スタッフ談)

 

  • 立地: 駅近くのビル2階。
  • 問題点:
    • 商圏の分析をしっかり落ち着いて行わず、駅前の立地と人通りの良さだけで物件を決定。
    • 2階の店舗は不便で、通勤通学以外の人通りが少なかった。
    • 価格設定と地域ニーズが合わなかった。
  • 結果: 8ヶ月で閉店。

D.パチンコ屋隣接の物件

当社で行った商圏分析では、商圏内に人口が足りず、駐車場もパチンコ店と共同でした。

商圏は片道2車線の大きな幹線道路沿いで、幹線道路が商圏を分断していただけでなく、店舗は、道路から少し入ってわかりづらい場所でした。パチンコ店に来られる客に来てもらうと言われ、始めました。

パチンコ店に来る客層とターゲットがあっておらず、商圏的にも悪かったです。反対を押し切ってお店をされましたが、ほどなく閉店されてしまいました。

  • 立地: パチンコ屋隣接の物件、商圏内に人口不足。
  • 問題点:
    • 店舗が幹線道路で商圏を分断していた
    • 道路から少し入ってわかりづらい場所だった。
    • パチンコ屋の客層と自店のターゲットが合っていなかった。
  • 結果: 反対を押し切って開店したが、閉店。

E.駐車場不足で移転

駐車場が足りないのに、無理やり開店した事例

自動車商圏(車)がメインでありながら、駐車場が2台しか用意できず、オープンした。開店してから、駐車場の重要さを痛感し、周りの空き地の所有者に声をかけたが、貸してもらえず、やむなく移転されました。

道路沿いの物件で、車速も早い場所だったため、認知していただくにも時間がかかる場所でした。移転場所は、銀行などや商社などが周りに多くある市街地で、平日は食数が出るが、土日はほとんど出ないという場所となりました。(当社スタッフ談)

  • 立地: 自動車商圏に開店したが駐車場が2台しかない物件
  • 問題点:
    • 駐車場不足で来客に不便が生じた
    • 近隣の空き地の所有者に駐車場を借りられなかった
  • 結果: 移転を余儀なくされた
以上は、ほんの少しの事例です。このような駐車場の問題、広さ、席数の問題等、商圏分析で得られたデータを無視して開店される方は、残念ながら後を絶たないのです。次の章では、当社の商圏分析ではどのような結果が得られるのか、明確にしていきます。

良い立地の条件とは?

ときどき、お客さまより依頼のある不動産物件を商圏分析してみると、トンでもないくらい、良い立地条件の場所があります。駐車場の無い、都市型立地における良い条件の場所は次のような場所です。

都市型立地の良い条件

  • 徒歩商圏:半径500m以内で昼間人口が2万人以上、理想的には3~4万人以上。商圏が幹線道路や線路、川などで分断されていない場所。
  • 競争倍率:飲食店競争倍率が、全国平均以下の競争倍率。できれば全国平均の半分以下程度
  • 年齢構成:昼間人口の年齢構成が、若い人が多い場所

郊外型立地の良い条件

郊外型の良い条件の場所は、次のような場所です。

  • 生活道路沿い:車速の遅い、生活道路沿いであること。
  • 人口密度の境界線:人口の多いエリアから少ないエリアの境界線辺り(昼間人口総数密度で人口密度の多い赤い色から、人口密度の少ない青い色に変化する付近)

3つの立地選定ミスの要因

1.競争の激しい立地

ライバルがたくさんいる、競争の厳しい立地を選ぶ人が多い。(ビジネスは絶対に競争をしないこと、まして、新規参入の弱者の立場なので、先輩の強者との競争は絶対に避ける

2.ビジネスモデルにあった立地選び

自分のビジネス・モデルが成り立つ場所を選んでいない(自分のビジネス・モデルにとって、ターゲットとしているお客さまがいる立地を選んでいない。更にはビジネス・モデルを明確に理解していない)

3.立地に左右されるビジネスを理解していない

うどん店、蕎麦店、ラーメン店のようなほとんどの麺ビジネスは立地に左右されるビジネスであり、お客さまに来て貰わないと成り立たないビジネスになっているという事実を理解していない人が多い。

(席数の少ない店、駐車場の足りない場所で開業する人が多い。いくらおいしくても、席数が足りずいつも満席であったり、車でなければ来れない場所であるのに、駐車場が足りないとお客さまが入りたくても、入れない場合が多い)

立地選定の重要性「蟻地獄」に例えると

立地選定を分かり易く例えると「蟻地獄」です。

ウスバカゲロウの幼虫の蟻地獄は、幼虫の時期を2~3年、土の中で過ごします。蟻地獄の獲物はその名の通り、地面を歩いている蟻です。

蟻地獄はエサである蟻を捕まえるために、蟻が歩き回る場所に巣穴を作り、円錐形の穴の中心部で、蟻が落ちてくるのを待っているのです。

蟻地獄は、巣穴の位置を命がけで決めるのです。もし、蟻が落ちて来ない場所に巣穴を掘ってしまうと、自分が餓死してしまうのです。

そして、もし、良い位置に巣穴を掘っていても、近くに先輩の大きな蟻地獄があれば、獲物の蟻をかすめ取られるかも知れないのです。

だから、蟻地獄はいつも命がけで巣穴を掘っているのです。蟻地獄の巣穴は、うどんそば店、ラーメン店における店舗に当たります。したがって、うどん店、蕎麦店、ラーメン店の新規開業者にとって、立地選定は命懸けの重要なテーマなのです。

飲食店成功の3大要素

飲食店の成功の3大要素は「商品力」「サービス力」「店舗力」が重要とされています。中でも「店舗力」に含まれる立地選びは、特に重要です。

商品力やサービスについては、開店時、少しレベルが低くても、努力をしてレベルを上げ続けていけば、何とかなるかも知れません。

しかし、店舗力に含まれる立地を間違えてしまうと、後から修正がきかないのです。出店コストで、もっとも大きな比重を占めるのが、店舗に関する部分です。

特にコストがかかるのが、「キッチンの工事費」と「機器設備」、次に「内装・外装」です。

すでに大きな投資をしているので、立地が違ったからもっと良い場所へ移動したいと思っても、容易に移転できないのです。総投資の6割程度かかるのと同時に、あとから修正がきかないので、もっとも最初から気を付けなければならない部分なのです。

しかし、多くの新規開業者は、ビジネスモデルや必要な条件を十分に考えず、立地を早急に決めてしまう傾向があります。

ところが、ほとんどの新規開業者は、この部分にエネルギーと時間を注いでおらずに、簡単に決めすぎているように思います。立地選定は、最後の最後なのです。

いろんなものが決まってから、それに相応しい立地を探すのが当たりまえなのに、何も決まっていないうちに、先に立地を決めてしまって失敗する人が多いのです。

よくある事例としても、当社のうどん学校、そば学校、ラーメン学校に参加した時点で、すでに立地を決めている人たちが非常に多いということです。

授業を進めているうちに、今契約している立地では良い結果が得られないと気が付くことがほとんどです。経営講義の授業の中で、その立地でもし開業すると、どのような結果が得られるか、ビジネス・モデルのシミュレーションをして見せます。

すると、最初に狙った利益の確保ができないだけではなく、利益が出て満足に運営できる店舗にはならないことが分かります。最近、地方からうどん学校に参加した生徒さんの例です。

駐車場7台、30坪の郊外の店舗で、月間利益を80万円得たいとのことでした。しかし、実際に客単価、回転率、営業日数からシミュレーションをしてみると、毎月得られる利益は約20万円余りでした。

このように、「どのようなビジネス」を「どのような立地」で行なえば、「どのような売上」が立ち、「経費がどの位必要」で、「どのくらい利益が得られる」のかは、開店する前にシミュレーションをしてみれば、簡単に分かるのです。

ほとんどの生徒さん、新規開業者は、自分のビジネス・モデルを組み立てず、利益のシミュレーションも行なわずに始めるのですが、これは武器も持たずに戦場に赴いている(行っている)ような状態なのです。

したがって、始める前から負け戦に突入しているのです。その結果、大切な虎の子の資金と人生の大切な時間を失ってしまいます。

開業する前に必要なすべての要素をキチンと理解して、正しい順序でうどん店、蕎麦店、ラーメン店を始めると、まず大きく失敗することはないのです。

しかし、残念なことにそれらのピースを揃えずに開業してしまう人たちが多いのです。

以上のように、うどん店、蕎麦店、ラーメン店は、立地に大きく影響されるビジネスであるのです。ただし、最近都会を中心に成長が著しいウーバー・イーツ等のデリバリー、宅配は、立地に影響されないビジネス展開が可能になります。したがって、新しいビジネスの情報を常に理解することも非常に重要です。

ウーバー・イーツで立地戦略はどう変わるか?

アメリカから始まった配車アプリが世界中で成功し、地域によっては同じカテゴリーの会社が次々と立ち上がり、大成功をおさめています。

そのウーバーとか同じカテゴリーの会社が、今、外食産業のデリバリー・ビジネスに突入しています。ウーバーが基本的に認められていない日本でも、ウーバーのデリバリー部門のウーバー・イーツが料理のデリバリーを始め、急激にエリアを拡大しています。

都内23区を始め、まだ中心都市部だけですが、神奈川、千葉、埼玉、名古屋、京都、大阪、兵庫、福岡とエリアを次々と広げているのです。ウーバー・イーツの登場で、ウーバー・イーツのデリバリーに特化したレストランも出来始めています。

今まで、レストランが自前でデリバリーをやらなければいけなかったのが、自分では何も投資せずに、ウーバー・イーツがデリバリーを一手に引き受けてくれるのです。

うなってくると、立地も選ばなくなり、客席も不要になり、キッチンだけの装備になるので、投資も少なくなります。その上、接客要員も要らないので、何もかもが非常に楽になるのです。

ウーバー・イーツが展開しているような大都市圏においては、今後とも、ウーバー・イーツに特化したレストラン・ビジネスがますます増えてくる可能性が高いのです。

しかし、この場合も、常にお客さまのフィードバックの反応がSNSで誰でも見ることが出来るようになり、ウーバー・イーツ内での競争は厳しくなることが想定されます。

また、ウーバー・イーツは配達員が自転車か、オートバーで、背中に背負った箱の中に料理を入れて運ぶので、振動等で盛り付けが乱れないような対策も重要で、デリバリーに向いた料理(配達時間が経っても美味しい料理)と盛り付けのきれいさ、料理をワンウエーで配送するための容器が重要な要素になります。

ウーバー・イーツの出現により、レストラン業界の競争の仕組みが大きく変わることが想定されます

これらもふまえ、次の章では、開業において失敗しないための立地選定について詳しく述べていきたいと思います。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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