この記事は2024年4月22日のロッキー藤井の情熱メルマガで配信された内容を一部修正して公開しています。
麺ビジネス全般の麺店、開業において「失敗」しないための立地選定

目次

はじめに

成功・失敗事例から学ぶ最適な立地の実践ポイント#2の続きです。

これまでお話してきた内容をふまえ、この記事では、「開業で失敗しないための立地選定」について詳しく解説します。

立地はビジネスモデルで決まる

すでに開業中の場合

今のお店の現状を理解する

まずは今のお店の立地と、お店の戦略やお客さまとの間にズレがないかを確認する。

立地と店舗戦略のズレとは?
「立地と商品コンセプト、お客さま像があっているか」

現状を理解するポイントとして、年間の売上傾向(右肩上がりか or 右肩下がり)で判断できます。

まとめると、

  • 売上が下がっているなら、「立地戦略」と「実際のお客さまの層」や「提供価値」があっていない(ズレている)可能性が高い。
  • お店の価値観、使命(ミッション)、コンセプト、戦略を見直す
  • 強力なライバルがいるかどうかも重要なポイントで、無理にライバルと張り合う必要はありません。
  • 商圏分析などで、年齢構成、世帯構成、持ち家比率など地域特性をおさえ、自店の立地の特徴をつかむ

戦略の再構築する

強みを徹底的に掘り下げ、ライバルとは戦わず、地域で一番になれるポジションを目指す。

お客さまのニーズを分析し、ブルーオーシャン戦略を意識して独自性を打ち出す
(顧客が望んでいて、自社・自店が提供でき、かつ競争相手が提供できない価値)

ブルーオーシャン戦略図
ブルーオーシャン戦略の参考図

新規開業を考えている場合

1.ビフォーコロナとアフターコロナの市場変化を理解する

コロナが発生し飲食店は打撃をうけました。

しかし、コロナ後に成功しているビジネスの大きな特徴があります。それはお客さまを最高にしているビジネスです。

 

コロナの影響で飲食店は大きな打撃を受けました。しかし、コロナ後に成功しているビジネスには、ある特徴があります。それは 「お客さまを最高に幸せにしている」 ということです。

詳しくは、「コロナ後に成功しているビジネスの大きな特徴」 で解説しています。

2.今後の市場変化を予測する

3.自分が本当にやりたいことを明確にする

「Food Tech革命」など新しい潮流を意識しながら、自分の価値観・使命・コンセプト・戦略を整理し、情熱を持てる分野で勝負ことが重要です。

しかし、自分の本当にやりたいことはすぐにはわからない方も多いかと思います。まずは自分自身を知るために、まずは「麺専門店開業、10個の質問」を十分な時間をかけて考えながら読んでください。

同時に、自分を振り返り、自身を理解することも重要です。時間がありましたら、「自分自身を理解する探索方法」を読んでみてください。

 

4.お客さま像を明確にする

やりたいことの先にいる「お客さま像」をはっきりさせます。

5.4でハッキリさせたお客さまがたくさんいる場所に狙いを定める

自分が狙いたいお客さまが集まる場所を特定する。

(参考:商圏分析)

これから成功する麺ビジネスの立地の本質

インターネットが全盛の時代、アマゾンのようなEC企業は「サイト」が店舗。

HP(ホームページ)の分かりやすさや検索のしやすさが勝負どころとなり、売店や本社の立地は販売にに影響を与える要素ではなくなってきています。

同様に、飲食店もインターネットや比較サイト、SNSの影響を大きく受けるようになっています。

点数評価が高い店舗は一気に人気が集中し、評価が低い店は客足が遠のく。結果として、開店から1年未満で40%以上が閉店し、3年未満では70%以上が閉店という厳しい状況が生まれています。

SNSにより、繁盛も凋落も一気に進む時代。辺鄙な場所(都会から遠く離れた不便な場所)でも、独自の魅力があれば「話題性」があり、繁盛に繋がることがあります。

したがって、こだわった商品やサービスで勝負できるなら立地そのものの重要度は、以前ほど決定的ではなくなっています。

最高の立地戦略

今後、生き残れるのは生産性の高い店、具体的には

  1. ファースト・フード
  2. カフェ
  3. ファイン・ダイニング

の3つのジャンルだと信じていますが、これらの立地も以前ほど、最高の立地を求めなくなっているのです。

私が今後、ファースト・フードにおいて、模範にすべき事例だと思うのは、ハンバーガーのシェイク・シャックです。

シェイク・シャックはNYで創業したのですが群を抜いて商品力が高く、サービスレベルも高いので、非常に人気があり1店舗当たりの売上もマクドナルドの約2倍と言われています。現在、世界中に急速展開を始めていて、日本にも既に13店舗が出店しているのです。

シェイク・シャックの創業者で、オーナーのユダヤ系アメリカ人、ダニー・メイアーはユニオン・スクエア・カフェやグラマシー・タバーンなど予約の取れない人気レストランをたくさん経営するレストラン・ビジネスの成功者であり、著書の「おもてなしの天才」ではサービスとホスピタリテイの違いに触れています。

このような魅力的なレストラン・ビジネスを作り上げると、立地は心配なくても良い立地を持っている大家から出店要請が舞い込むようになります。グローバルで通用するようなビジネス・モデルを作り上げることが、立地に心配しないで、レストラン・ビジネスで勝ち残る王道ではないかと思います。

要するに、磨き込まれた魅力的なビジネス・モデルを完成することが、立地戦略の最も効果の高い方法で、他の追随を許さなくなるのです。優れたビジネスモデルの構築こそが他社を寄せ付けず、長く勝ち続ける秘訣なのです。

ラーメン、うどん、そば店の立地に関する基本的な考え方

ラーメン店、うどん店、そば店における、家賃と売上の関係図
「家賃」と「売上」の関係図

都心型の家賃の相場は、坪あたり最低で1万円、高いところでは7~8万円程度です。

家賃と売上はバランスすることが重要で、麺ビジネスでは「家賃は売上の7%以内」が目安。

したがって、

  • 家賃30万円なら売上は月400万円以上
  • 家賃20万円なら売上は月300万円以上
  • 家賃15万円なら売上は月200万円以上
が必要になります(上記は参考例)

このように家賃と売上のバランスを意識しながら立地を選定していきます。
 

大都市の中心地を除けば、殆どの国内の店舗は郊外型立地になり、郊外型の立地で多くの人たちが失敗するのが交通量の多い幹線道路沿いの立地選定です。

うどんそば店、ラーメン店の立地として相応しくないのは、幹線道路沿いで、かつ車速の早い道路です。車の速度の速い場所は、麺ビジネスには適していません。

また、幹線道路沿いの出店は、外食大手がひしめきあっているので、競争も非常に厳しいのです。逆に女性ドライバーでも楽に運転出来る、車速の緩やかな道路が麺ビジネスに適し、生活道路沿いの車速の遅い場所が狙い目です。

幹線道路と生活道路との違いは歴然で、幹線道路は産業車両、大型トラックやダンプカーなどがどんどん走っており、反対に、女性ドライバー等が乗用車で、生活のための買い物等に、のんびり走っているのが生活道路です。ただし生活道路沿いでも駐車場台数は、商圏分析で割出された台数の確保が重要です。

よく失敗しているのが、幹線道路沿いへの出店と駐車場の台数の少ない店です。特に平日の昼間は1人1台の乗車率で来店するお客さまが多いですから、いくら店内で席数が空いていても、駐車場が満車では入れないので結局は売り上げの上がらない店が沢山有ります。

したがって、駐車場はしっかり確保は必然で、駐車場に使うスペースは車1台に約7坪必要です。

ですから50席の店を作るとしたら店の建坪は最低30坪から40坪は必要で、駐車場台数が最低30台ですから、駐車場だけで210坪となり、土地全体の面積では300坪が必要です。

郊外型店舗でのほとんどの失敗事例は、駐車場の不足です。

インターネット、SNS、AIで立地はどう変わるか

インターネットやSNSの発達により、立地の重要性は相対的(以前と比べて)に下がってきています

さらに現在の4Gから、5Gの時代(ビッグデータを処理できる時代)になると、リアルタイムで混雑状況までスマホで分かるようになり、お客さまが無駄なく店を選べるようになります。

そうなると今まで大きな問題であったお客さまのドタキャンで、営業に大きな影響が出るようなこともなくなってきます。要するに、食事をするお客さまの数と、レストランで調理する数のバランスが取れ、食材のロス等も大きく省けるようになります。

 

行列するレストランもなくなり、予約して行けば、すぐに食事が出来、待ち時間のロスもなくなり、飲食行動も非常に効率的になることが想定されます。すると、立地についても、自分の求めるお客さまのたくさんいる場所への出店という、外食本来の姿に戻るのではと思います。

このコンセプトでこのような店を開き、こんなライフスタイルのお客さまを集めたいとなれば、AIによって、最適な場所が導き出されるようになるのです。そして、レストラン・ビジネスの競争がもっと高度化されて、AIで判断しきれないような独創的なレストラン・ビジネスが多くの人たちを魅了する可能性も出てきます。

したがって、常にAIの裏をかくようなイノベーテイブなレストラン・ビジネスも今後の可能性は大きく、レストラン・ビジネスがもっともっと高度化し、複雑になっていくのです。

たとえば、先ほど説明したシェーク・シャックにしても、過去はカフェとファイン・ダイニングで大成功したレストラン企業なのです。

カフェとかファイン・ダイニングで大成功した会社が、より簡単なファースト・フードで勝負したので、他のもともとファースト・フードで出発している会社は競争にならないのです。

ようするに、これからは競争のレベルが全く異なってくるのです。今後、上流の外食で成功した企業が、下流のファースト・フードに本気で乗り出すと、非常に強いビジネスを構築出来るのではと思います。

特に、ホスピタリテイ・レベルの高いホテル業界から外食への参入は出てくるのではと、思います。

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藤井 薫(ロッキー藤井)

株式会社大和製作所、株式会社讃匠 代表取締役。
令和5年 秋の叙勲にて「旭日単光章」受章。

1948年5月、香川県坂出市生まれ。国立高松工業高等専門学校機械工学科卒業。川崎重工株式会社に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年に大和製作所を創業。

過去48年以上にわたり、麺ビジネスを一筋に研究し麺ビジネスの最前線で繁盛店を指導。麺専門店の繁盛法則について全国各地で公演を行う。小型製麺機はベストセラーとなり、業界トップシェアを誇る。
「麺店の影の指南役」「行列の仕掛け人」として「カンブリア宮殿」「ありえへん∞世界」「スーパーJチャンネル」等、人気TV番組に出演するほか、メディアにも多数取り上げられる。
また、2000年4月にうどん学校、2004年1月にラーメン学校とそば学校を開校し、校長に就任。

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