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第四章 立地戦略の成功事例、失敗事例の続きです。
当社の麺専門店向けの商圏分析ソフトを作り上げ、私がお客様の商圏の分析を始めたのは、2014年4月からだったので、今年でちょうど15年経過したことになります。
その間、恐らく7千件を超える商圏分析をしてきました。
作り上げた時から、画期的な方法だと自負していましたが、この商圏分析で救われたお客さまの数は数えきれないくらい多いし、また、商圏分析のデータを無視して、無理な場所で開店し、既に閉店してしまったお客さまも数限りないと思います。
もっともっと商圏分析を有効活用すれば、お客さまの成功にもっと貢献できるのではと思う次第です。
この業界で、このような商圏分析ソフトを持って、こんなにたくさんの件数を分析しているのは、恐らく当社だけであるし、おかげで、この15年間で商圏分析に関するたくさんのノウハウが蓄積されてきたのです。
実際のソフトとデータを使って分析するのは、当社のスタッフですが、私はその6千軒すべてに目を通し、場合によってはコメントを付けてきたのです。
万一、スタッフの分析の間違いがあれば大変なことになりますから、私は分析したすべての物件に目を通し、今日(2019年4月7日)もフランクフルト来ていますが、外国に来ていても、いつでもメールで送られた分析データを100%、落としなく目を通しているのです。
この15年間を通して感じるのは、生徒さんが依頼される物件が年々小さくなり、席数も小さく、狭い物件が非常に増えているのです。
そして、以前よりも駐車場の足りない、難しい物件が増えているような気がします。
商圏分析で分かること
商圏分析では実にさまざまなことが分かりますが、最も大きい要素は人口動態で、商圏分析ソフトには直近の国政調査のデータが入っており、商圏内の昼間人口数、夜間人口数、年齢構成などで、これにより、駐車場が何台必要かどうかが分かるのです。
商圏エリアを半径500m以内の徒歩商圏、半径1km以内の自転車商圏、半径5km以内の自動車商圏の3つの商圏に分け、それぞれの昼間人口、夜間人口を分析します。
そして、半径500mの徒歩商圏で昼間人口が2万人以上いれば、駐車場なしで営業可能なのです。
商圏分析を通して、分かるのは次の通りです。
必要な駐車場台数
都心型立地でも、本来駐車場が不要だと思っている場所でも、実際は線路、幹線道路、川が商圏を分断して、駐車場が必要な場所がたくさんあります。分析結果より、席数に対して、駐車場台数が何割必要かの数字を表示します。
昼間の人口密度、夜間の人口密度
地図上の色分けで人口の多い場所、少ない場所が昼間人口、夜間人口に分類されて表示されるので、その場所が、住宅地域なのか、商業地域なのか、あるいは、混在地域なのかが、簡単に判断できる。
飲食店の競争状態
その商圏人口をレストランの数で割ると、そのエリアの飲食店の競争状態が分かる。
日本全体の平均値は164人/店で、世界で一番飲食店の競争が厳しいのが韓国で、この数字が84人/店、次がスペインで133人/店で世界で2番目に競争が厳しく、日本は世界で3番目です。従って、164人/店より多い方が日本全国平均より競争が緩く、この数字が小さいほど、飲食店の競争の厳しい場所になります。
その商圏の年齢構成
商圏の人口と併せて、店舗出店の場合に重要な要素はその商圏の年齢構成です。例えば、20歳代が一番多い場所は近くに大学があるのが分かります。日本は高齢化が進んでいるので、ほとんどの場所で高齢者が多くなっています。
人口総数と徒歩商圏、自転車商圏、自動車商圏ごとの人口分類
当社の商圏分析では、歩いて来店する徒歩商圏は半径500m以内、自転車商圏は半径1km以内、自動車商圏は半径5km以内のそれぞれの昼間人口、夜間人口、そしてそれぞれの男女の人数を特定します。徒歩商圏だけを対象にすれば、駐車場が不要で、その場合は徒歩商圏内の昼間人口が2万人以上必要です。
マトリックス地図で、ライバルの飲食店の位置が分かる
マトリックス地図とは、人口総数と昼間人口総数の差をわかりやすくするために地図に色をつけたもので、赤色の濃い部分は、昼間人口が多く、夜間人口が少ない場所、反対に青色の濃い部分は、夜間人口が多く、昼間人口の少ない場所で、黄色は昼間も夜間も同じ程度人口のいる場所で、いずれの色も濃いほど人口が多くなります。また、このマトリックス上で青い点で表示されているのが、ライバルの飲食店の位置です。
商圏が線路、幹線道路、川で遮断されている場合の正味の商圏人口
都心型立地では、商圏が線路、幹線道路、川で遮断され、一見昼間人口が2万人以上いて、駐車場が不要に見えても、実際は駐車場が必要な場合が多いのです。その場合は、地図上で遮断された正味の商圏を図示し、その人口を割り出し、必要な駐車場台数を引き出します。
付録の統計データで、さらに詳細な商圏情報が得られる。
数年前より、下記の付録の統計データを付け、さらに詳細な商圏データを提供しています。それらのデータは半径5kmのターゲットエリア内、商圏が存在する県、日本全体と3つに区分して下記のデータを提供しています。
- 人口総数、男性、女性、有配偶者、昼間年少(14歳以下)、生産(15歳以上、64歳以下、老年(65歳以上)のそれぞれの人口
- 世帯総数、1人、2人、3人、4人、5人以上の世帯数
- 住宅状況、総数、持家、借家、共同住宅数
- 事業所数、全産業、小売業、食料品、飲食店
- 総合バランス、半径5km以内の事業所、昼間人口、有配偶者、持ち家世帯、高齢者、独り暮らしの県内、日本全体との比較(事例参照)
チャート項目 | T.A | 福岡県 | 全国 |
---|---|---|---|
事業所数 | 1.12 | 0.94 | 1 |
昼間人口 | 1.07 | 0.99 | 1 |
有配偶者人口 | 0.92 | 0.95 | 1 |
持家世帯 | 0.76 | 0.86 | 1 |
高齢者人口 | 0.87 | 0.97 | 1 |
一人暮し世帯 | 1.1 | 1.08 | 1 |
- 人口ピラミッド
- ターゲットエリア内事業所構成(世帯数と事業所数の割合)
- 昼間人口比率
- 世帯人員別構成
- 年齢3区分構成
- 良い立地の見つけ方
立地とビジネス・モデルは深い関係があります。
例えば、全国的にチェーン展開しているある有名なラーメン店は、人口の多い都市型立地で成り立つ、40席タイプのビジネス・モデルです。
同じく全国的に200店以上チェーン展開している有名なラーメン店は、郊外型の40席が基本的なビジネス・モデルです。
このように、ビジネス・モデルと立地は密接な関係があり、前者が郊外型立地を求めても決して成功せず、後者が都市型立地を求めても成功しないのと同じです。
従って、あるビジネス・モデルで成功している店の商圏分析をしてみると、そのビジネス・モデルの特有の商圏特性が分かります。
従って、どのようなビジネス・モデルで展開するかによって、立地選定は全く異なるので、今から始めようとするビジネスと近いビジネス特性を持った異業種の店を商圏分析すると、始めたい店舗の商圏特性が見えてきます。
要するに、同じようなライフスタイルを持ったお客さまを集めている異業種の店に注目することです。
そして、戦略的に商圏分析を使う方法として、気になるライバル店の商圏分析をしてみることです。
そうすると、どのような商圏基盤の立地で勝負しているかが分かり、ライバルの戦略が透けて見えるのです。
また、自分が開店したい場所の商圏分析のポイントをずらしながら行ってみると、その商圏全体で、どこに真空スポットがあるのかが分かります。
1カ所だけの分析では分からなかったことが分かるようになり、ライバルがいなくて、独り勝ちが出来る商圏が存在していることが、たまに見つかることがあります。
また、商圏分析と併せて、自分の足で歩いて調査したり、自動車で走り回り、自動車で行きやすい場所で、まだライバルが気づいていないような場所を見つけられるのです。
商圏分析のデータと実際の商圏を比較することにより、商圏分析データの深読みが出来るようになり、その商圏についての理解が深まり、どこがスイートスポットであるか、だんだん分かるようになってきます。
そして、以上のことはいずれも、時間とエネルギーがかかることで、立地確保は命がけで行うべき事柄なのです。