ページコンテンツ
水和とは、小麦粉の粒子に対して、水の分子一粒一粒、すべて均等に行きわたらさせることです。
しかし、水和は混ぜただけでは不十分です。混ぜたあとは、一定の時間と温度条件で、寝かせる必要があります。
熟成を行うことで、生地内の水分子が、小麦粉粒子に広がり、しっとりします。これが小麦粉の水和です。
ミキシングが終わると、崩れにくい麺生地ができあがります(水和率が20~40%程度の場合)。さて、この生地をさらに美味しくするための工夫が必要です。
ラーメン作りにおいて、「熟成・休息」は非常に重要な工程です。この熟成する意味(なぜ熟成させる必要性があるのか)をよく理解し、生地を休ませる方法を適切に行い、グルテン構造を発達させることが、おいしいラーメンを作るために重要です。
では、なぜ生地を熟成(休ませる)させるのでしょうか?
生地を休ませると以下のような4つの効果が期待できます。
小麦粉の水分補給
脱気
脱気について解説します。ミキシングをおこなうと、生地内に小さな気泡が入ります。
気泡が多く入ると、麺を調理(茹でる)ときに、以下のような問題が発生します。
- グルテン組織に存在する気泡が加熱により何倍にも膨張し、グルテン組織が内部から押し出されるように破裂し、その結果、食感が損なわれる。
- グルテン組織が破壊されるため、調理後の麺は早く柔らかくなる傾向があります。
- また、麺の中に小さな気泡がたくさんあると、麺の透明感がなくなり、白く不透明になる。
つまり、脱気されていれば、グルテン構造に由来する、本来の透明感や良好な食感を持つ麺ができるのです。
グルテンの緩和
捏ね続けてグルテンを発達させると、グルテンの構造が破壊されてしまいます。そこで、生地に働きかけ、休ませることが必要です。
例えば、限界まで発達させた生地があり、グルテンの緊張度が100%だった場合、この生地を5分間休ませると、緊張度は50%に低下します。さらに5分間休ませると、緊張度は50%の半分の25%、さらに5分後には12.5%、30分後には半分の半分に低下する。そして約30分後には、ミキシング工程で負荷がかかり、ストレスを受けたグルテンの張力がほぼ100%になります。
酵素の役割
小麦粉の原料である小麦は、もともと植物の種子であるため、発芽を助けるエネルギー源としてでんぷんやたんぱく質を蓄えています。これらのデンプンやタンパク質は酵素によって分解され、エネルギーとして発芽しますが、この酵素も小麦粉に含まれています。この酵素が適度に働くと、味が良くなり、ラーメン生地の状態も良くなります。一年のうちで最もおいしいラーメンは、春と秋だと言われています。これは、これらの季節が「酵素の働き」に最も適した気候だからです。夏は気温が高いので、酵素の働きが活発になりすぎて、生地が柔らかくなりすぎて、たるんでしまいます。気温が高いと酵素の働きが活発になり、グルテンやタンパク質を分解してしまうので、麺が切れやすくなります。また、冬は気温が低いため、酵素の働きが弱くなります。その結果、生地が熟成しにくくなります。つまり、気温をコントロールすることで、生地の熟成の進み具合をコントロールすることができるのです。
熟成時間の目安(休息時間と温度の関係図)
低加水麺、中加水麺の適切な熟成時間(休息時間)は、室温(20℃前後)で30分~1時間です。
多加水麺の場合、28℃で2時間の熟成時間が必要です。
※注意点
・指定された時間以上に、生地を休ませないこと。なぜなら、食感が悪くなるからです。具体的に解説すると、酵素の働きにより、デンプンやタンパク質が、過剰に分解されるためです。休ませすぎることで、麺の食感が悪くなります。
・熟成は、温度と時間に相関があります。温度が高いほど熟成が早く進みます。
ここでご紹介した熟成を、暑い日でも寒い日でも、一定に再現する熟成庫も取り扱っております。
おいしいラーメンを作るためには、3段階の熟成工程(休息)が必要ですが、その中でも1番目の熟成工程は、もっとも重要です。
ぜひ一度、熟成を行い、違いを確かめてみてください。
次の記事では、このバラバラになっている状態の生地を、複合する工程(生地をシート状に加工する工程)に入ります。この工程については、別の記事でご紹介しています。
工程ごとの記事リスト
- 食材の準備
- ミキシング
- 熟成
- 美味しいラーメンの麺生地を作るために1回目の熟成(現在の記事)
- 複合
- 第二熟成
- カット
- 麺線熟成
- 茹で